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聖地アンフィールドに凱歌は響くか。
リバプールOBが語る涙の歴史秘話。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/05/12 09:00
サラー、フィルミーノらのタレントはもちろんだが、リバプール最大の魅力と言えば、やはりアンフィールドの熱なのだ。
ドゥデクにとって最高の瞬間。
「あれはキャリアで最高の瞬間だった」
元ポーランド代表GKは言う。今年3月には14年前のCL決勝と同じカード、リバプール対ミランのレジェンドマッチに出場し、試合中に障害のあるファンと交流した優しい大男は、明るく裏話を語ってくれた。
「117分にシェフチェンコがチャンスを迎えた時、止めるのは不可能に思えた。いや、リプレーを何度も観た今でもそう思う。実はあの後、(ヨン・アルネ・)リーセに濃厚なキスをされたんだ。妻にもされたことがないような激しい口づけだった(笑)」
PK戦で披露した滑稽な動きは「ジェイミー・キャラガーから『相手を惑わせるために、('84年に欧州を制した)ブルース・グロベラーの真似をするんだ』と助言を受けてね。それがなければ、手足をゆらゆらさせたりしなかっただろう」と明かした。
シュミチェルが明かすPK秘話。
前半に途中出場し、後半にチームの2点目を決めたブラディミル・シュミチェルもPK戦の秘話を次のように語る。
「当初は右に蹴ろうと思っていたが、ジダが3回連続で左に飛んだので、少し迷った。次こそは右かも、と。でも(同胞のミラン・)バロシュが『自分を信じろ』と言ったので、その通りにしたら正解だった」
ただし当時のミランは「とてつもなく強く、うちの選手で相手のレギュラーになりえたのは、2、3人くらいだろう」とシュミチェルは言う。
「だからこそ、苦しんだ末に手にしたあの勝利には大きな意味があるんだ」
欧州で難関を乗り越えたという意味でも、14年前と今季の歩みには類似点がある。どちらもグループステージで苦戦し、最終節に突破を決めているのだ。
'04年はオリンピアコスとの6節で1-0か2点差以上の勝利が必要で、リバウドに先制された後、後半に2点を返し、最後はジェラードが閃光のような一撃を見舞った。昨冬のナポリ戦でも勝利が必須条件となり、ジリジリした展開のなか、現チームのエース、サラーが決勝点を奪っている。どちらの機会でも、会場のアンフィールドは激しく揺れた。