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聖地アンフィールドに凱歌は響くか。
リバプールOBが語る涙の歴史秘話。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byGetty Images

posted2019/05/12 09:00

聖地アンフィールドに凱歌は響くか。リバプールOBが語る涙の歴史秘話。<Number Web> photograph by Getty Images

サラー、フィルミーノらのタレントはもちろんだが、リバプール最大の魅力と言えば、やはりアンフィールドの熱なのだ。

ベニテスとクロップの大きな違い。

 リバプールはこのシーズン、ユナイテッドに2戦2勝。最終的に得点数や得失点差でも上回ったが、11度のドローが仇となり、その宿敵に勝ち点4差の2位に終わった。

「リバプールは栄光の歴史と伝統を持つクラブだ。当時、すでに長らくリーグ優勝から遠ざかっていたから、周囲の期待は大きかった。だから知らぬ間に、僕らは重圧を背負っていたのだろう。勝負どころで硬くなってしまうこともあったと思う。勝ちきれない試合が多かった理由は、慎重なスタイルにもあったかもしれない」

 当時のチームを率いたベニテス監督は、守備組織の構築と敵の強みを消すことに長けた優秀な戦術家だ。特にカップ戦で手腕を発揮し、'05年にはリバプールを欧州制覇に導いている。

 ただしジェラードが自伝の中で「石のように冷たい人間」と明かしているように、選手たちに慕われていたとは言いがたい。リーグ戦のタイトルにあまり縁がなかったのは、長丁場の戦いでチームをひとつにまとめきれなかったことが理由かもしれない。そこは情熱的なユルゲン・クロップが率いる現チームとの大きな違いだ。監督自ら名付けた“ヘビーメタル・フットボール”の完成度は年々高まっている。

「今のチームの売りは圧巻のエネルギーと固い団結力にあるから、その点の不安はないだろう。ジェラードほど際立つ存在は見当たらないが、ビルヒル・ファンダイクにはリーダーの素養があると思う。指示出しの声をこれまで以上に出すようになったし、自覚も風格も増しているように見える」

 今や世界一のCBとも評されるファンダイクは2年目の今季、第3キャプテンを務めている。ジョー・ゴメスやジョエル・マティプらとコンビを組み、両サイドにアンドリュー・ロバートソンと生え抜きのトレント・アレクサンダー・アーノルドを従えた最終ラインは堅牢そのものだ。

リーグ制覇目前に迫った5年前。

 5年前の'13-'14シーズンは文字通り、リーグ優勝の目前まで接近した。オフに移籍騒動を起こしたルイス・スアレスをジェラードが慰留すると、このウルグアイ代表FWは八面六臂の大活躍。前シーズンに起こした噛みつき事件により開幕5試合に出場停止となりながらも、復帰後は決定的な仕事を連発した。

 ダニエル・スタリッジやラヒーム・スターリング、フィリペ・コウチーニョらが攻撃陣に名を連ねたチームはシーズンを通じて上位をキープ。4月にマンチェスター・シティに3-2で競り勝ち、残り4節の時点で首位にいた。「ヒルズボロの悲劇」(FA杯の一戦で96人のリバプールファンが死亡した英国スポーツ史上最悪の事故)から25年を迎えたシーズン終盤、悲願成就の機運は高まっていた。

【次ページ】 ジェラードを襲ったあの悲劇。

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