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令和に語り継ぐ、J平成名勝負(7)
~2006年第30節:FC東京vs.川崎~ 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/05/11 10:30

令和に語り継ぐ、J平成名勝負(7)~2006年第30節:FC東京vs.川崎~<Number Web> photograph by J.LEAGUE

この対戦カードが正式に『多摩川クラシコ』と命名される前の一戦だったが、壮絶な撃ち合いは両サポーターにも印象深いだろう。

まさかの逆転負けに憲剛も呆然。

 そして、電光掲示板の時間表示が消えて1分が経った頃、鈴木のクロスを宮沢が頭で押し込み、4-4の同点となると、巨大な興奮がスタジアムを飲み込んだ。

 それでも、ドラマはまだエンディングを迎えない。6分のアディショナルタイムも終わりが近づいたとき、今野がペナルティエリアの外から右足を振り抜くと、濡れたピッチの力を借りたボールは、川崎の選手たちの足下を高速ですべり抜け、ゴールネットを揺らすのだ。

 その瞬間、ゴール裏の青赤が爆ぜた。

 殊勲の今野は、一目散にベンチに駆け寄り、飛び出してきた控え選手、スタッフにもみくちゃにされ、歓喜の輪が広がった。

 その様子を、川崎の背番号14は、ただ呆然と見つめるしかなかった。

翌年の多摩川クラシコでの雪辱。

 大逆転劇はむろん、魔物の仕業などではなく、川崎のゲームコントロールの問題である。しかし、スタジアムを包み込んだ異様な空気と、何かに取り憑かれたように攻め続けたFC東京、次第に我を失っていく川崎の姿に、サッカーの怖さを見た気がした。

 実は、このドラマにはまだ続きがある。「多摩川クラシコ」と銘打たれた翌2007年シーズン、川崎は5月のホームゲームでFC東京を5-2で下すと、10月のアウェーゲームでは、なんと7-0の大勝を収め、前年のリベンジを果たすのである。

 大量得点にも攻撃の手を緩めず、ライバルを完膚なきまでに叩きのめす様子が、前年に味わった屈辱の大きさを物語っていた。

■2006年Jリーグ ディビジョン1 第30節第1日■
2006年11月11日/15:04キックオフ
味の素スタジアム/入場者数23251人

F東京5-4川崎

【得点者】F東京:ルーカス(14分)、戸田(51分)、平山(83分)、宮沢(89分)、今野(89分)、川崎:谷口(7分)、我那覇(17分)、ジュニーニョ(42分)、マギヌン(49分)
【警告】F東京:ルーカス(55分)、平山(76分)、川崎:ジュニーニョ(33分)、マルコン(37分)、箕輪(51分)、ジュニーニョ(53分)、マギヌン(63分)、マルコン(84分)
【退場】川崎:ジュニーニョ(53分)、マルコン(84分)

【出場メンバー】
<FC東京>
GK 1 土肥洋一
DF 25 徳永悠平
DF 19 伊野波雅彦
DF 5 増嶋竜也
DF 8 藤山竜仁
MF 6 今野泰幸
MF 23 梶山陽平
(→62分 MF 16 宮沢正史)
MF 18 石川直宏
(→54分 DF 15 鈴木規郎)
MF 13 戸田光洋
(→68分 FW 39 平山相太)
MF 14 馬場憂太
FW 9 ルーカス

監督 倉又寿雄

<川崎フロンターレ>
GK 1 吉原慎也
DF 5 箕輪義信
DF 13 寺田周平
DF 2 伊藤宏樹
MF 19 森勇介
MF 14 中村憲剛
MF 29 谷口博之
(→89分 DF 4 井川祐輔)
MF 6 マルコン
MF 11 マギヌン
(→67分 DF 3 佐原秀樹)
FW 9 我那覇和樹
(→75分 FW 16 鄭大世)
FW 10 ジュニーニョ

監督 関塚隆
 

『令和に語り継ぐ、J平成名勝負(6)~2003年2nd第15節:横浜FMvs.磐田~』もお読みください!

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