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目の肥えた日本平のファンが唸る、
清水MF中村慶太のキックと視野。
posted2019/05/11 08:00
text by
望月文夫Fumio Mochizuki
photograph by
J.LEAGUE
清水エスパルスのホーム・アイスタ日本平は、他のスタジアムとは違ったタイミングで歓声が上がることがある。
3月2日のリーグ第2節ガンバ大阪戦、V・ファーレン長崎から今季加入した左MF中村慶太が同サイドの深い位置から軽く蹴ったボールが、逆サイドのやや高い位置で待ち構えた右MF金子翔太にピタリと収まった。このプレーに約1万7000人で埋まったスタンドは、「ワーッ」という大歓声とともに大きな拍手に包まれた。
「何が起こったのかと」
中村を驚かせた大歓声は、視野の広さや展開力、そしてキック力などを、ファンやサポーターが賞賛したものだった。
「そこに注目してもらえたこともうれしいし、清水という地域のサッカーに対する熱さを改めて感じた」と中村は目を輝かせた。
この日は勝利にこそ導けなかったが、ホームで初お披露目となった舞台で移籍後初ゴールも決め、存在感を一気に高めることとなった。
大前に憧れ、流経大柏高校へ。
中村は千葉県出身。2016年まで清水に所属していた大前元紀(大宮)が、高校選手権で優勝(2007年度)した姿にあこがれ、後を追うように流経大柏高に進学。流経大を経て'16年にJ2の長崎に加入した。巧みなドリブルや高い展開力で2年目にはJ1昇格に大きく貢献。クラブも自身も初のJ1となった昨年は、残留こそできなかったが、7得点を記録し、長崎を牽引した。
そして今季、新天地となった清水でもシーズン開幕前の鹿児島キャンプから早速、左MFとしてスタメン候補に名乗りを上げ、開幕戦から定位置を勝ち取った。第10節終了時まで1得点にとどまってはいるが、金子は「視野が広く、短時間で高い位置まで攻め込む能力とスピード、精度の高いキックやミドルシュートのパンチ力もあり、チームとして去年までと違ったバリエーションで展開できている」と、中村の加入効果を口にした。