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渡邊雄太の元チームメイトで親友、
楠元龍水が挑む延岡学園の再建。
posted2019/05/03 08:00
text by
青木崇Takashi Aoki
photograph by
Yasushi Kobayashi
2月5日のメンフィス・グリズリーズ対ミネソタ・ティンバーウルブズ戦の試合中、渡邊雄太の両親がテレビ中継で映し出された時、1人の若者が真横の観客席に座っていた。
彼の名は楠元龍水。渡邊とは尽誠学園のチームメイトであり、卒業後もお互いを刺激し合える大親友である。
16歳で日本代表の合宿に招集されるなど、渡邊が高校時代から将来を嘱望されていたことは多くのファンが知るところ。一方、楠元はインターハイやウィンターカップでベンチ入りできるかどうかの選手で、出場機会を得たのが3年生の時だった。
チーム内での立場に違いがあったとはいえ、2人とも真面目な性格、向上するためにハードワークを率先してできる努力家という点でも共通している。楠元の「お互いに目指すものを突き詰めて、前向きに進んでいこうという価値観が合う」という言葉は、正にその象徴と言っていい。
尽誠学園を率いる色摩拓也コーチは当時、同級生の部員が渡邊に対してなんでも言える環境作り、お山の大将にならないよう細心の注意を払っていた。選手同士の良好なコミュニケーションは、チームの成功に欠かせない要素。だれもが認める大黒柱の渡邊に対して、楠元は思ったことを躊躇することなく口にできた数少ないチームメイトだった。
時間の経過とともに2人の間に強い信頼関係が築かれ、現在も継続しているのである。
選手としての技術は違っても。
「僕自身も高校時代から日本代表に選出されたので、その中でチームメイトとかに自分が日本代表だからとか、そういうことを気にせずに、僕が間違ったことをしたら言ってほしいといつも伝えていました。
その中で龍水なんかは僕がおかしい行動を取れば、率先して言ってくれるヤツだったので、そういった意味でも彼の存在は高校の時から大きかったです」(渡邊)
「僕が覚えている限り、彼はあの時日本で一番の選手でした。チームのことを考えると彼にもダメなところがあって、“ダメなところを言い合えるチームの関係じゃなければいけない”と色摩先生も言っていました。
僕なんか彼よりも数倍下手だけど、自分のことを棚に上げて雄太のダメなところを腹くくって言ったことがありました。それに対して、彼は僕の意図も汲んでいたと思います。色摩先生のメッセージを表現しているという意味もあったから本気でぶつかり合えたし、たった3年間しか同じ時間を共有していないけど、今も悩んだらお互いに連絡をとっていますね」(楠元)