“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ドリブラー少年は黒子に徹していた。
川崎DF登里が口にした結果への執着。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/26 17:30
黒子に徹しつつも、瞬間的な突破が光るサイドバックに成長を遂げた登里享平。J王者の川崎の中でも、貢献度は高い。
登里が戦い続けた「狭間」。
勝利と敗北。レギュラーと控え。守備と攻撃。個人とチーム。そして、明るいキャラクターと葛藤する自分。ある意味、登里享平にとって川崎で過ごしてきたプロ10年間と少しは、ずっと「狭間」で生き続けてきた。
狭間で自らを見つめ、時にはもがき苦しみながら、プロサッカー選手としての土台を積み重ねてきた。これは想像をする以上に難しい。常に不安と焦り、「これでいいのか」という自己疑念がつきまとう。
「どうしても自己疑念は消えないし、これからも消えないと思います。でも、僕はそれが多くを占めていないんです。サッカーの楽しさが半分あるからこそ、続けられるんです。試合中、試合後にいろんな選手と話をして、相手を見ながら、立ち位置を考えて、周りの選手のタイプによってポジショニングを変化させることで、彼らを生かせている時は凄くサッカーが楽しい。
それに悩みの先には発見もあるし、今年のようにかつての自分を取り戻そうとする意欲も芽生えてきて、それも楽しい。だからこそ、折れずに続けられるし、野心も向上心も持ち続けられるんです」
不安、焦り、自己疑念を全て消し去ろうとせず、受け入れながらも、それに飲み込まれないようにする。
プロ11年目の“川崎のアコーディオン”登里享平は、楽しさを失わずにまだまだサッカー小僧として2つの牙を磨き続ける。さらに進化する自分の姿を思い描きながら。