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手負いのマンUに甦る20年前の記憶。
バルサ相手に「3度目の奇跡」なるか。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byUniphoto Press

posted2019/04/12 16:30

手負いのマンUに甦る20年前の記憶。バルサ相手に「3度目の奇跡」なるか。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

第2戦のキーマンとなるポグバ。攻撃陣の奮起がバルサ戦の鍵を握る。

今のユナイテッドなら希望を持てる。

 パリでの一戦の前に、このノルウェー人監督は「(逆転のためには)先制点が必要」と言い、開始2分でその通りになった。その後に同点とされるも、先制したロメル・ルカクが追加点を決め、勝ち越して前半を終了した。

 そして、「残り30分の時点で1ゴール差であれば、何が起きてもおかしくはない」と前日の会見で続けた指揮官の言葉通り、後半アディショナルタイムにVARの判定でPKを獲得し、21歳のマーカス・ラッシュフォードが見事に沈めて壮絶なドラマを完遂させた。

 まさにユナイテッドのクラシックな一番だった。

 しかも勝利の瞬間、彼らはファーストチームの10選手を欠いており、試合終了の笛をピッチ上で聞いた中には、背番号44のタヒス・チョンや背番号54のメイソン・グリーンウッドがいた。リザーブチームに所属する19歳と17歳の両者にとって、もちろんこれがCLデビュー戦だった。

 だから再びホームで負けても、敵地でのリターンマッチに希望を見出せる。パリでの激闘の後に暫定の肩書きが取れて正式監督となったスールシャールのもとで、ポジティブな空気に包まれている今のユナイテッドなら。

数字では劣るが、明るい材料もある。

 もっとも準々決勝の相手バルセロナは、パリSGよりも成熟度で優り、CLでの勝ち方も熟知している。第1戦では序盤にルイス・スアレスの頭での折り返しがルーク・ショーのオウンゴールを誘い、最後まで得点差をキープされた。先制点のシーンを演出したのは、やはりリオネル・メッシだった。ボックス内に抜け出して浮き球を受け、優しいクロスでスアレスのヘディングを導き出している。

 UEFA公式のポゼッション率は38%対62%。シュート数は10対5ながら、枠内にかぎれば0対3となる。このデータを見ると、ユナイテッドは負けるべくして負けたと言えるかもしれない。特に最後の項目のゼロは、デイリー・テレグラフ紙によると「この大会では2005年以来初」だという。嫌な数字だ。

 ただし、40分にディオゴ・ダロトはフリーで決定機を迎え(ヘディングは枠を外れた)、ハーフタイムに士気を高めた後にはチーム全体が躍動した。

 指揮官が「試合を重ねるごとに成長している」と目を細める22歳のスコット・マクトミネイは、バルサの中盤の手練れたちと互角に戦い、ラッシュフォードは負傷明けながら、そのスピードは相手の脅威となった。来週までには彼のフィットネスが上がるはずだし、ネマニャ・マティッチら離脱者も戻ってくるかもしれない。

【次ページ】 逆転に不可欠なポグバの活躍。

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