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EU離脱に反対するガリー・リネカー。
プレミアリーグに与える影響とは?
posted2019/04/14 11:00
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
Philippe Echaroux/L'Equipe
英国が揺れている。国民投票により欧州連合(EU)離脱を決めたものの、EUとの完全分離を主張する与党・保守党と、離脱後も緊密な関係を維持したい野党・労働党の距離が縮まらずに政局は混迷を深めている。当初予定されていた3月29日の離脱はもとより、4月12日に延長された期限までにも政府案の議会承認が得られずに、期限再延長をEUに求めようとしている。
すべてが不確かななか、EU離脱後の英国はどうなっていくのか。誰もが不安を感じているうえに、離脱に反対する声、離脱の撤回を求める声も相変わらず根強い。
BBCの名物番組であるマッチ・オブ・ザ・デイの司会を務め、BTスポーツではチャンピオンズリーグのキャスターも担当しているガリー・リネカーもそのひとりである。英国サッカー界に大きな影響力を有するリネカーは、700万人以上のフォロワーを持つ自身のツイッターで、EU離脱に強く反対するコメントを発し続けている。彼によれば、離脱はプレミアリーグにも深刻な影響を与えるという。
リネカーの危惧はどこにあるのか?
フィリップ・オクレール記者が、『フランス・フットボール』誌3月18日発売号でリネカーの真意を確かめた。
監修:田村修一
代表選手にもビザが必要なのか?
――英国のEU離脱期限が3月29日に迫っています。あなたは離脱を危惧していますが、それは英国サッカー全体にとっても危惧すべきことなのか。もしそうであるならば、理由は何でしょうか?
「答えはイエスで、他に考えようがない。実際にどれぐらいのインパクトがあるか誰もわかっていないし、その不確かさ自体がそもそも大きな問題だ。EUの選手も、他の国の選手同様に英国に入る際にビザが必要になるのか? 自らが高いレベルにあり、代表にも常時選ばれていることを証明しなければならないのか? これまではそうではなかった。影響は若い世代により深刻だ。
実際、エンゴロ・カンテやリヤド・マフレズといったプレミアのスター選手たちも、ビザの取得は不可能だったハズだ。
僕らが英国から出国する際に、どうすればビザなしで可能になるかよくわからないように、今はすべてが不透明だ。プレミアリーグはビザの制約を撤廃したがっているが、現実には難しい。リーグはEU離脱対策委員会を立ち上げたと聞くが、彼ら自身が何をどう問題にしたらいいか分かっていない。不安を感じる理由はそこにある」
――他のビッグリーグに比べてプレミアリーグは、国外の若い才能を惹きつける魅力を失うのでしょうか?
「その通りだが、サッカー界の人間と話をしても、彼らはそこを軽視している印象を受ける。離脱までに時間がある。まだ何も決まってはいないと。すべては五里霧中で、これからどこに向かうべきか誰も考えていない。
2016年6月の悪夢(EU離脱の是非を問う国民投票。賛成51.9%の僅差で離脱を決定)はポンドの価値を下げてクラブの購買力を低下させた。ジェイドン・サンチョ(ボルシア・ドルトムント)やリース・ネルソン(ホッフェンハイム)、エミル・スミス・ロウ(RBライプツィヒ)といった、出場機会を得るために大陸のクラブにレンタルされていったイングランド史上初の若い世代のことを、今は真剣に考えるべきだ。彼らはこのままプレーを続けられるのか?」