プレミアリーグの時間BACK NUMBER
世界が狙う18歳ハドソン・オドイ。
新鋭FWはチェルシーの顔となるか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/09 10:30
18歳でイングランド代表デビューを飾ったFWハドソン・オドイ。バイエルンからのオファーが伝えられるなど、移籍市場でも注目の的だ。
指揮官が先発起用に慎重な理由。
そんな中、筆者は割と素直にサッリの説明を受け止めた。会見場では少数派だったに違いないが、「頑固」と言われる新監督は、ハドソン・オドイの扱い方に関しては「首尾一貫」と理解できるからだ。
思い返すと、メディアが騒ぎ始めたのは今季のプレシーズン。インテルの守備陣を抜き去り、機動力のあるアーセナルのDFエクトル・ベジェリンも苦しめた当時17歳のハドソン・オドイは、当然、指揮官の目も引いたはず。
とはいえ、プレシーズンとシーズン本番は大違い。サッリは慎重だった。
リーグ戦での出場時間は少ないといわれているが、実質的にはトップチーム定着1年目。昨年5月の時点ではチェルシーU-18監督だったジョディ・モリス(現ダービー助監督)が、「目を見張るようなプレーを見せるが、同時に目を瞑るわけにはいかないようなプレーもある」として、まだまだ成長途上にある選手だと強調してもいた。
具体的には、普段は軽快なタッチが時に軽率と映る自陣内での判断や、まだ体に染み付いてはいない、ロストボール後の守備などが改善を要するプレーだろう。
加えて、サッリは自身もプレミアでの1年目だ。自分なりの攻撃的スタイルをチームに植え付けながら、タイトル獲得、ノルマとされるトップ4復帰へのプレッシャーにもさらされる立場にある。そうした状況で、若さ故のリスクもある18歳を、プレミアでも早くから先発起用できる新監督がどれだけいるだろうか?
ヨーロッパリーグ(EL)でも先発起用が限られているとの指摘もあるが、現実味のある優勝にはCL出場資格という「副賞」が伴う欧州第2の大会は、今季のサッリにとっては最も重要なカップ選手権のようなものだ。
競争相手はアザール、ウィリアン……。
しかも、ハドソン・オドイの競争相手はトップクラス揃い。ただでさえ、トップ4争いの苦戦でプレッシャー下の新監督に対し、追い打ちをかけるかのように「若手も使わない」と責めるのは酷と言うものだ。
ハドソン・オドイは基本となる3トップの左右どちらでもプレーできるが、左サイドのレギュラーは不動のアザール。新監督が左での起用を好むウィリアンにしても、攻撃陣で随一のハードワーカーにしてプレースキッカーだ。右のペドロ・ロドリゲスに関しても、指揮官は「オフ・ザ・ボールの動きはチーム最高」と高く買っている。
例えば、ウィリアンとペドロの先発が「ベテラン頼り」とも報じられたEL16強のディナモ・キエフ戦第1レグ(3-0)。
攻勢を続けた前半に先制ゴールを決めたのはペドロだった。勢いが弱まりかけた後半には、ウィリアンがFKで追加点をもたらした。助監督のジャンフランコ・ゾラが、「カラム!」と叫んでウォームアップに出ていたハドソン・オドイを呼んだのは、スコア上の余裕が生まれた数分後だった。投入された当人は、終了間際にネットを揺らした。しかし、得点機の到来は、一気に逆サイドへとプレーを振ったペドロのお膳立てがあったからこそ。