“頑固”サッリにメディアも紛糾。

　リーグ戦以外を含めれば、今季先発した全7試合で5ゴール5アシスト。それだけの逸材を控え目な起用に留めてきたサッリには、批判的な視線が向けられてきた。会見で「なぜ、もっと起用しないのか？」と問われる度に、「今は我慢の時期」、「まだ改善が必要」と答えてきたが、チーム戦術が「ワンパターン」と評されるようになったのと同じく、若手に関しても悪い意味で「頑固」だと言われるようになっていた。

　その傾向は、ハドソン・オドイの代表デビューを経てさらに強まった。

　代表ウィーク明けのカーディフ戦（2－1）では、アウェイゲームに駆けつけたファンもチャントで抗議。「何もわかっちゃいない！」「サッリ更迭！」の合唱が起こったのは、ハドソン・オドイの出番が消える3人目の交代枠が使われた77分のことだった。

　ファンの気持ちはわからなくもない。カーディフ戦での一幕は、またしてもポゼッションの優位を得点に反映できず、逆に1点をリードされていた時間帯でのことだった。

U-17W杯やユース大会でも別格。

　サポーターがハドソン・オドイの残留を願ったのは今冬のことだが、トップチームでの出場機会増は前体制下の昨季から望まれていた。

　突破力のあるユース出身ウインガーは、昨季前半のタイミングで開催されたU-17W杯の優勝メンバーである。しかも、スペインを下した決勝で3アシストを記録した主力で、チェルシーでもすでにトップチームに合流していた。

　また、FAユースカップではチェルシー優勝の原動力となってもいた。マンチェスター・シティを下した一昨年の決勝。ホームでの第2レグで、中盤から独走してゴール左上隅に叩き込んだ右足シュートは、筆者の脳裏にも刻まれている。

　アーセナルのホームで優勝を決めた昨年の決勝第2レグでも、2ゴール1アシストの大活躍。ファンの胸には、現在の20番ではなく、ユースチームで11番を背負っていた頃からハドソン・オドイへの期待が膨らんでいたのである。

　一方、メディアの反応は過剰気味と思われる。

　代表でも通用したハドソン・オドイには、『デイリー・メール』紙などで「ユースからトップチームへのパイプがないも同然のチェルシーで我慢する必要などない」との論調も見られた。サッリが、ブライトン戦前に先発起用をほのめかすと、「プレッシャーに屈してスタンスを変えた」と糾弾。

　実際に先発で出場した試合後には、大衆紙の記者から「なぜ使ったのか？」との質問が飛んだ。対して指揮官は、「引いてタイトに守るブライトンとの試合は、アウトサイドに開いて1対1の勝負を挑める場面も多いだろうから、彼に向いていると思えた」と返答。「なるほど」という質問者の反応には、どこか皮肉っぽさが感じられた。

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