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男子エペ団体がW杯初優勝の快挙。
日本フェンシングが躍進する理由。 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byKyodo News

posted2019/04/01 10:00

男子エペ団体がW杯初優勝の快挙。日本フェンシングが躍進する理由。<Number Web> photograph by Kyodo News

男子エペ団体がW杯を初制覇し喜ぶ(左から)山田優、見延和靖、宇山賢、加納虹輝。

太田の引退後、フェンシングのリーダーに。

 若手の台頭に刺激を受けるのは、同世代の選手だけでなく、より多くのキャリアを重ねた選手たちも同様。日本男子エペの躍進を語るうえで、忘れてはならない存在が2016年リオ五輪で6位入賞を果たした見延だ。

 加納と同様に、見延も相手の力に対して屈さぬパワーとテクニックを擁し、対戦相手によってスタイルを変え、オフェンシブにもディフェンシブにも戦える器用さも備える。

 当たり負けない強さもさることながら、太田の引退後、エペだけでなくフェンシングチームのリーダーとして牽引。経験や存在感だけでなく、昨シーズンは怪我に見舞われながらもリハビリとトレーニングに取り組み、11月のW杯スイス大会でも優勝するなど、紛れもなく世界のトップフェンサーとして数多くの大会で輝かしい戦績を収めてきた。

 かつて太田が世界で勝つことで「自分たちも頑張れば世界の頂点に届く」と指針になったように、エペでも見延、加納が個人戦で世界のトップや表彰台に立てば、当然ながら共に戦う選手たちにも刺激となり、競争意識がプラスに働く。

 見延と共にエペを牽引してきた宇山賢や、ジュニアで世界を制した山田優、それぞれ異なる個性を持った選手が同時期に台頭。選手層も年々厚みを増し、太田も会長就任直後からフェンシング界全体の活性化を見据え、「エペを盛り上げたい」と公言してきた。

「交代してください」と言えるチームに。

 だからこそ、団体戦でどう勝つか。「個」ではなく「チーム」となるべく、五輪に向けたポイントレースを直前に控えたアルゼンチンでのW杯はこれからを見据えた「挑戦だった」と見延は言う。

「それぞれが強くなっているから、誰が戦ってもポイントを取れる。だからこそ相手に取られたら、すぐに取り返したくなる気持ちが強くなりますが、団体と個人は全く別もの。団体戦でそういう勝手なことをすると相手にポイントを重ねられてしまうので、自分が、と意識しすぎず、むしろ相性の悪い選手に対しては『交代して下さい』と素直に言い合える。

 今まではどんな状況、相手に対しても『強い気持ちを持つ』というだけでしたが、『交代して』というのをマイナスに捉えるのではなく、チームのためにそれぞれが“つなぐ”という意識を高める。それはチャレンジしてうまくいったところだと思います」

【次ページ】 東京五輪の金メダルが鮮明になってきた。

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