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男子エペ団体がW杯初優勝の快挙。
日本フェンシングが躍進する理由。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKyodo News
posted2019/04/01 10:00
男子エペ団体がW杯を初制覇し喜ぶ(左から)山田優、見延和靖、宇山賢、加納虹輝。
北京五輪以降、本格的にはじまった強化。
北京五輪以後、フルーレのみならずエペ、サーブルの強化にも本格的に着手。ウクライナやイタリア、韓国など諸外国からコーチを招聘した。練習拠点となる国立スポーツ科学センターの練習場所も広がり、海外遠征も増えた。
普段からより多くの選手と剣を合わせる機会が増えれば、パワーで勝る相手に対しても、次の攻撃を展開するためにどう動けば効率的か。剣を払う際の動きや、相手に剣で叩かれないような間合い、距離の詰め方など実戦を通して感覚や技術を習得することにつながる。
身長差を補う「腕っぷし」。
最も顕著な形で現れたのが、2月のバンクーバーW杯で優勝した加納虹輝の活躍だ。
五輪でメダルを獲得した太田に憧れ、小学6年からフェンシングを始めた加納は当初、フルーレを専門としていた。だが、なかなか勝つことができず、本人曰く「遊び半分で出た」というエペで高校1年時にカデの部で優勝。
それまでは「地味で面白くない」と思っていたエペも、勝てれば楽しいし、西田らエペを専門とする選手の動きを見ると、フルーレよりもダイナミックでカッコいい。フルーレで磨いたスピードを武器に、自らのスタイルを形成し、ジュニアのみならずシニアの大会に出場間もない2017年1月のドイツW杯や、同5月のフランスW杯で3位に入るなど、一気に飛躍を遂げた。
タイプも年齢もキャリアもさまざまで、中には身長が2mを超える選手もいるエペで、決して大柄ではない加納がなぜこれほど勝てるのか。その理由を西田コーチは「腕っぷしが強いので、剣の当たり負けをしない。相手の力で押されると剣の位置が低くなったり、相手と距離を空けようとするのに、加納はそれが一切ない」と言い、加納自身も海外勢に対して体格差をリスクに感じることはないと言い切る。
「手が長いから有利とは僕は思っていません。もちろん不利ではないですが、相手と叩き合うだけでなく、相手のアタックを止める動作もあるし、接近戦で突き合う時にはむしろ手が短いほうが有利になることもあります。僕はスピードに自信があるので、それにあったスタイルを確立させることで身長差は関係なくなると思っています」