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欧州サッカーを戦うための新常識。
敏腕ディレクターが強豪をつくる。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto Press
posted2019/03/26 11:00
グアルディオラ監督(右)を支えるチキ・ベギリスタインディレクター(左)。シティの強さはフロントの実力でもある。
優れたディレクターの存在。
そしていま、時代は変わった──。
マンチェスター・シティ、リバプール、バルセロナなどの好調は、優れたディレクターの尽力によるもの、と表現して差し支えない。監督、コーチと何回もデータに基づいた意見をすり合わせ、よりよい人材を発掘していく。
今シーズン終了後、アヤックスのフレンキー・デヨングがバルセロナに移籍するが、カタルーニャの強豪は2年以上にわたってオランダの逸材をモニタリングしていた。
また、シティはジョゼップ・グアルディオラ監督のリクエストに添い、ディレクターのチキ・ベギリスタインが数多くのタレントを獲得してきた。ジョン・ストーンズ、アイメリック・ラポルテ、イルカイ・ギュンドガン、ラヒーム・スターリング、レロイ・サネなど、直近3シーズンにおける強化の成功例は、ベギリスタインと彼のスタッフが選手の性格や家庭環境などを入念に調査した結果である。
彼ら強化部門の努力によって、こんにちのシティが存在する。
リバプールも2016年11月、マイケル・エドワーズを雇用してから強化が波に乗り始めている。'18年1月、総額1億6000万ユーロ(約218億円)でフィリペ・コウチーニョをバルセロナに売却して収益をあげ、昨年1月には他クラブを出し抜きビルヒル・ファンダイクを獲得。
そして昨夏は迅速な動きでファビーニョ、アリソンを補強した。優れた交渉術と素早いフットワークには、ユルゲン・クロップ監督も全幅の信頼を寄せている。
セビージャで名を挙げた敏腕モンチ。
こうした経緯があるからこそ、モンチことラモン・ロドリゲス・ベルデホがローマを離脱した際にヨーロッパのメディアは色めき立ったのだ。本命アーセナルとの予想を覆し、モンチは古巣セビージャに復職したが、もしプレミアリーグにチャレンジしていたら、この業界に大きな変化をもたらしていたのではないだろうか。
セルヒオ・ラモス(現R・マドリー)、イバン・ラキティッチ(現バルセロナ)、ダニ・アウベス(現パリSG)をはじめ、数多くのタレントを発掘してきたモンチの慧眼があれば、アーセナルは復活の第一歩を大きく記せたはずだ。逃がした魚はとてつもなく大きい。