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欧州サッカーを戦うための新常識。
敏腕ディレクターが強豪をつくる。

posted2019/03/26 11:00

 
欧州サッカーを戦うための新常識。敏腕ディレクターが強豪をつくる。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

グアルディオラ監督(右)を支えるチキ・ベギリスタインディレクター(左)。シティの強さはフロントの実力でもある。

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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Uniphoto Press

「監督が望んでいないタイプの選手をディレクターとやらが連れてくる。その選手が活躍できなかった場合、なぜか責任は監督にあるという。選手の個性が分かっていないってね。こんな不条理、認められるわけがないじゃないか!?」
(ハリー・レドナップ監督/当時ポーツマス)

「ディレクターって何者だね? 交差点で交通整理をしている人を指すのかい? 私がトップである限り、すべてのことは私が決める」
(アーセン・ベンゲル監督/当時アーセナル)

 その昔、プレミアリーグでディレクター制度が理解されていなかった。レドナップしかり、ベンゲルしかり……。彼ら監督がゴーサインを出さない限り移籍交渉は進まず、ときには監督自ら選手を口説き落とすケースもあったのだから、ディレクターの職務を理解できるはずがない。

プレミアの価値観を変えたコモッリ。

 そんな時代――2005年に、トッテナムはひとりのディレクターを雇用した。彼の名はデイミアン・コモッリ。プロ選手としての実績は皆無に等しく、しかも強化部門の責任者にフランス人が就任する……。異例すぎる人事は、まったくといっていいほど歓迎されなかった。当時のトッテナムを率いていたマルティン・ヨルも、コモッリを否定する者のひとりだった。

「私の失敗はすべてコモッリが原因だった」

 確かに、うまくいかない補強もあった。ケビン・プリンス・ボアテンク(現バルセロナ)、ダレン・ベント(前バートン・アルビオン)、ロマン・パブリュチェンコ(現アララト・モスクワ)などは、なんのインパクトも残せずノースロンドンを去っている。

 しかしその一方で、コモッリはギャレス・ベイルとルカ・モドリッチ(ともに現レアル・マドリー)、ディミタール・ベルバトフ(引退)、エウレリョ・ゴメス(現ワトフォード)など、トッテナムで活躍し、サポーターに愛された選手も獲得している。

 ヨルの発言は鵜呑みにできない。エクセルを用いてデータを細かく分析したコモッリの手法が、いや、エクセル自体がチンプンカンプンだったのかもしれない。

【次ページ】 優れたディレクターの存在。

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