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J史上最年少34歳シュタルフ監督。
思い描く“日独融合”の強化スタイル。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byTakashi Sugiyama
posted2019/03/05 17:30
「選手たちがどんなプレーを見せるか楽しみ」と語るシュタルフ新監督。ドイツ流の指導で日本サッカーに新風を巻き起こす。
シュタルフが考える日本人の強み。
ただし、日本の文化を否定しているのではない。むしろ、内での考え方を知りつつ外から見る時間が長かったからこそ、日本の「陰」のみならず「陽」もくっきりと目に映る。
「モチベーションを下げずに我慢して続けられるとか、人の話を聞いて真面目にやろうとする。これは指導者が教えやすいというより、選手が伸びやすい文化だから消したくないんです。思いやり、仲間意識、協調性も、そうですね。チームスポーツで、すごく有利に働く部分です。
日本人の『仲間のために』という思いは世界一強いかもしれないし、これはすごく大きなパワーを生み出すもので、絶対に壊してはいけないと思います」
日本が劣ると言われるフィジカルも、ニュアンスで片づけずに噛み砕くと、まったく違う見え方になる。
「日本のフィジカルは最強だ、と僕は思っています。こんなに俊敏に動けるということはなかなかないし、走り続ける持久力、それを何度も繰り返す回復力のすべてがフィジカルです。
唯一欠けているのは、体のサイズに関係するパワーでしょう。でもトータルで見たら良い要素はたくさんあるから絶対に活かしたいし、それを前面に出せるシステムと攻撃パターンを構築していくつもりです」
ユース以来、17年ぶりの復帰。
UEFAのAライセンスまで取得したドイツで、指導者のキャリアを始めることもできたはずだ。それでもJリーグを選んだのは、「日本のサッカーを強化したいから」だと語る。そのために、ユース年代にユニフォームに袖を通したYSCCに、17年ぶりに監督として帰ってきた。
「自分が見てきたことや学んできたことを、翻訳機を通さずに伝えられる人材って、たぶん日本にそれほど多くいないと思うんです。
よく英語で『Lost in translation』と言われますが、翻訳の過程で大事な部分が失われるというのは、よくあることだと思います。だから、僕のように生まれつきの環境で2カ国語をしゃべれるなら、そういう宿命にあるというか、貢献していきたい、貢献していかないとダメだという思いがあります」