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J史上最年少34歳シュタルフ監督。
思い描く“日独融合”の強化スタイル。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byTakashi Sugiyama
posted2019/03/05 17:30
「選手たちがどんなプレーを見せるか楽しみ」と語るシュタルフ新監督。ドイツ流の指導で日本サッカーに新風を巻き起こす。
ドイツで対峙した「使えない」という評価。
「技術的な指導を多く受けていた日本では断然下手だったのに、向こうに行ったら一番技術があるのが僕でした。『ちょろいな』程度に思っていたんですが、1年間ほとんど試合に出られませんでした。
評価基準は技術ではなく、試合でいかに1対1に勝てるか、どれだけ結果に残るパフォーマンスを発揮できるか。技術力があっても『使えない』と評価されていたことに気付かされました」
1対1。近年、日本代表を率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下、「デュエル」との呼び名で急速に存在感を増した言葉だ。
Zweikampf(ツヴァイカンプフ)という言葉の意味。
もちろん、1対1は日本でも基本中の基本として考えられているが、捉え方が違う。大事なのは「戦うこと」自体ではなく、「戦い方」。シュタルフ監督は14歳からプレーと並行して指導も行ない、20歳前後の頃にはドイツでUEFAの指導者C級ライセンスも取得した。その際、初めて学んだ「1対1の戦い方」は、「目からウロコ、でした」と語る。
「ドイツ語ではZweikampf(ツヴァイカンプフ)と言いますが、いろいろなZweikampfがあるわけです。ピッチのどこで行なわれるのか、相手との距離、相手の利き足……。いろいろな状況下で、どんなポジショニングや対応なら勝率が上がるのかを、細かく教えていく。
地域のトレセンのコーチもやりましたが、年間カリキュラムの中で、かみ砕いて教えていましたね。少なくとも中央とサイドでの違いとか、周囲と距離がある場合、相手を背負っている時と前向きの時の差など、大きく分けても8個くらいある戦い方を教えます。もちろん技術やフィジカルがある方が有利ですが、“戦術”抜きでは、個人の勝率は大きく下がります」
「少なくとも、僕は日本では教わらなかった」という1対1の個人戦術をベースとして、グループ、さらにチームの戦い方を構築していくのだという。
現在預かるのは子どもではないJ3の選手たちだが、「指導は個人とグループ、チームと、すべて並行しながらですね。でも、1対1は僕の中では“絶対”なので、疎かにしたくないんです」と、辛抱強く植え続けていくつもりだ。