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相馬監督があえて「J1昇格」宣言。
今年のゼルビアはデコボコに尖る。
text by
郡司聡Satoshi Gunji
photograph bySatoshi Gunji
posted2019/02/23 08:00
昨季、J2で躍進を遂げた町田ゼルビア。クラブが大きく変容する中で、相馬直樹監督の思考も変化している。
バブンスキーの存在で変化が?
相馬監督が発したコメントの中に気になるフレーズがあった。それは「尖った部分がないと面白くないですから、多少デコボコしていてもいいのかな」というフレーズだ。
これまでの相馬ゼルビアは、どちらかと言うと傑出した個を是とせず、コレクティブな集団を作り上げてきた。しかし、昨季の成功体験が、影響しているのだろう。次第に指揮官の考え方は変わろうとしていた。
昨季で言えば、ドリアン・バブンスキーが好例だ。リーグ戦で先発出場こそ一度もなかったが、試合終盤の貴重な同点弾や勝ち越しゴールを2つずつ決めるなど、ジョーカーとして活躍。強化部は、無理が効くプレーで貢献したバブンスキーの存在がなければ、勝ち点「8」は取れていない計算になる、とまで評価していた。
突出した個性を持つバブンスキーの存在に、指揮官も思うところがあったのだろう。チームとしての機能性を遵守しながら、強烈な個性も力を発揮できるチームを作る。前述の言葉から分かる通り、今季の相馬監督はその難しいバランス感覚を求められるチーム作りに、チャレンジしている節がある。
相馬監督の熱が一段階上がった。
グループとしての規律やまとまりを重んじれば、強烈な個性は埋没しやすい。しかし、それだけでは群雄割拠のJ2で頭一つ抜け出すことは難しい。「J1昇格」を目標に掲げる今季は、相馬監督自身も「ある意味ミラクルを起こさないと、昇格は果たせないと思っている」と話しているように、もう一段階上の領域にたどり着こうと、もがいている。
そして、選手たちに求めるマインドへのアプローチにも少々変化が生じている。指導を受けて3年目になる選手会長の奥山は、指揮官の変化を感じている1人だ。
「J1昇格に向けた形が見えたことで、相馬監督の熱の入り方は一段階上がったのかなと。例えばミーティングの言葉1つをとっても、普通ではできないようなことをやろうとしていることが、言葉の強さに表れていると思います。
もちろん、選手たちも監督を超えるような熱量を出さないといけないと思っています。あと1点を取れば優勝だった。あの昨年の悔しさを日々忘れずに取り組んでいきたいですし、その思いを積み上げることが優勝への道。こだわりながらやっていきたいです」