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相馬監督があえて「J1昇格」宣言。
今年のゼルビアはデコボコに尖る。
text by
郡司聡Satoshi Gunji
photograph bySatoshi Gunji
posted2019/02/23 08:00
昨季、J2で躍進を遂げた町田ゼルビア。クラブが大きく変容する中で、相馬直樹監督の思考も変化している。
ハードだった準備期間を経て。
新チームの立ち上げ以降、相馬監督は選手たちに向けて常々「自分が命運を握っている、自分がこのチームを勝たせるという意識が必要になる」と働きかけてきた。「自分たちの結果で環境を変える」(FW中島裕希)という強い意志の下で戦ってきた2018シーズンは、4位というクラブ史上最高順位を記録。またサイバーエージェントグループへの参画という援助もつかみ取った。
マインド面におけるアプローチの変化は、「意志の力を甘く見てはいけない」という成功体験が背景にある。
開幕戦の東京ヴェルディ戦に向けた準備期間初日の2月20日。トレーニングを終えたチーム主将の井上裕大は言った。
「今年のキャンプでの練習は本当にハードでしたし、いつ落とすんだろうと思うぐらいやっていました。ここまで積み上げてきたものは、僕がいる4年の中で一番ハードだったと思います。ここまで積み上げてきたことが、必ずシーズンに跳ね返ってくると信じて、あとはピッチで表現するだけですね」
チームは“生き物”だ。長丁場のシーズンの中で、チーム状態には必ずバイオリズムがあるし、難局に直面することもあるだろう。それでも、ハードなトレーニングを乗り越えてきた町田の選手たちは、一貫したチーム戦術の下、1年間を戦い抜けるベースは築けたという自信を宿している。
「昇格、と僕が決めないことには」
もちろん、6月末のクラブライセンス申請までに、J1ライセンス取得に向けた諸条件を整えなければならない。それが大前提とはいえ、昨季の優勝争いとは違った別次元のプレッシャーが掛かる戦いへ挑む2019シーズン。
改めてチームを率いる相馬監督に、J1昇格に懸ける“覚悟”を聞いた――。
「僕のことを知っている人からすると、『昇格って言うんだ』と思ったんじゃないですか。ただそれをやると僕が決めないことには、昇格は果たせないと思っています。昨年の結果をもう一度やれと言ってもそんなに簡単ではないですし、J2は相当難しいリーグです。
ライセンスの問題で昇格を断たれたチームが、(昇格の要件を満たした年に)厳しい戦いを強いられたこともあります。言葉にするまでどれほど考えて、腹を決めているか。あまり説明もしたくないというか、『昇格』というこの言葉を出した時点で、その覚悟を汲み取ってもらえれば。正直、重い言葉だと思っています」
第2次相馬体制発足6年目。相馬監督にとって“集大成”とも言っていいシーズンは、東京ヴェルディとの『東京クラシック』から、始まる。