JリーグPRESSBACK NUMBER
C大阪に完封されたヴィッセルの困難。
“VIP”の本領発揮はいつになるか。
posted2019/02/25 11:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
理想と現実の狭間に、ヴィッセル神戸がいきなり立たされた。
2019年のシーズン開幕をいち早く告げる一戦として、ヴィッセルは2月22日にセレッソ大阪と対戦した。舞台となったのは大阪のヤンマースタジアム長居だが、試合前の注目はアウェイチームに集中していたといっていい。
名字の頭文字を並べて“VIP”と呼ばれるダビド・ビジャ、アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキのトライアングルが、いよいよJリーグのピッチに立つからである。
ビジャとイニエスタはスペイン代表として、ポルディことポドルスキはドイツ代表として、ワールドカップで優勝した経験を持つ。世界チャンピオンの一員となった外国籍選手が3人同時に出場するのは、Jリーグの27年の歴史で初めてのことだ。
3人の年齢を合計すると104歳のベテランたちは、フィジカルを強みに世界のトップレベルで戦ってきたタイプではない。全盛期は過ぎたものの、衰えは感じさせていない。
現役のブラジル代表がチームを牽引した1990年代の鹿島アントラーズ、横浜フリューゲルス、ジュビロ磐田などを超えて、Jリーグ史上最高の外国人トリオが誕生した、と言ってもいいだろう。
セレッソのブロックがヴィッセルを遮断。
ところが、勝ったのはヴィッセルではないのだ。
ホームチームのセレッソが、うまく試合を運んだのは間違いない。
指揮官ミゲル・アンヘル・ロティーナは、守備の時間帯は5-4-1になるシステムでヴィッセルを迎え撃った。今シーズンは自分たちでボールを握ることを目ざすはずのチームが、ポゼッションを譲って自陣に守備ブロックを引いた。
選手交代も効果的だった。64分、この試合最初の交代カードとして都倉賢が投入されると、最前線から2列目に下がった柿谷曜一朗のパスセンスが一気に引き出され、次第にオープンな展開となるなかで好機を迎えていく。
77分の決勝ゴールは右CKからだったが、リスタートを得点へ結びつけるのはロティーナらしい。来日3年目のスペイン人監督は、J2の東京ヴェルディを率いた'17年と'18年もリスタートを要所で生かし、主力を引き抜かれながらも2年連続でJ1参入プレーオフへ進出している。