マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
宮崎キャンプ巡りは野球の楽園。
広島の庄司、SB中村宜、オリの2人。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/02/20 17:00
オリックスキャンプで太田椋が父親で打撃投手の暁さんから恵方巻きを食べさせてもらうひとコマ。
黒田が抜けても優勝できたのだ。
去年のキャンプでは、「丸佳浩」がいた場所が、今年はポッカリと空いているようにも見える。
丸喪失。広島の今季を多くの人が心配している。
ある主力選手がこんなことを語ってくれた。
「確かに、丸がいなくなるのは痛い。でも、われわれは“黒田(博樹)さん”の抜けた2017年を経験してます。丸も去年は39本打ちましたけど、黒田さんの時は確実に10勝できる投手とチームの精神的な柱がいっぺんにいなくなった。それでも、僕らは、優勝してますからね」
サラッと言ってのけた。
「丸はバッターだし、“引き算”ばっかりじゃない、長野(久義)が来てるんですから。今年だいじょうぶ? よく言われるんですよ、でも僕なんかは逆に、え、なぜ? って言ってますよ」
宮崎は海ではなく山である。
一夜明けて、2日目。
宮崎市内のホテルが、キャンプ巡りのお客さんでいっぱいなので、泊まりは都城だ。
レンタカーを借りて宮崎、日南に通う1時間から1時間半の道中は、手を加えられていない“田舎”そのものの風景が続いて、つい目を奪われる。
平野の広がりに、菜の花の黄色。2月もなかばになると、白梅が満開だ。
肥えたブタを満載にしたトラックが来る。黒い牛がぎっしり詰め込まれたトラックとすれ違う。「畜産・宮崎」である。
名産・飫肥杉(おびすぎ)の林は真っ赤に見えて、これで強い風のひと吹きもあれば、目の前が煙るほどの花粉を舞い上げてやろうと、いまや臨戦態勢ではないか。
どこから切り出してきたのか、杉の巨木を積み上げたトレーラーが苦しそうに峠道をよじ登る。
みんな、宮崎は“海”だと思っているだろうが、宮崎は“山”である。どこまで行っても、どこまで走っても、宮崎は、山また山である。