マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
宮崎キャンプ巡りは野球の楽園。
広島の庄司、SB中村宜、オリの2人。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/02/20 17:00
オリックスキャンプで太田椋が父親で打撃投手の暁さんから恵方巻きを食べさせてもらうひとコマ。
ソフトバンクの中村宜聖に再会。
ソフトバンクB組(ファーム組)の紅白戦が、サブグラウンドで始まっている。
白組9番に「中村宜聖(たかまさ)」の名前を見つける。
快足、強肩、野球の虫、但し野球はそこまで上手くない。地元福岡・西日本短大附高から育成で入ってきたルーキーだ。
彼のお父さんと大学の野球部が同窓で、小さい頃から“野球少年・宜聖”を知っている。高校2年の時には、雑誌の取材で記事にもしている。
最初の打席、速球のスピードにびっくりしたようなスイングで三振していた。もう一度見ても、似たり寄ったりだろうな……とは思ったが、もしかしたら、の祈る気持ちで次の打席までネット裏に残ってみた。
ウェーティングサークルでバットを振っていた彼が、なんとなくこっちのほうを振り返ったときに目が合った。
アレッ! って顔になって、素振りの勢いが急に強くなった。なにかのスイッチが入ったようだ。
気負うなよ……もうオヤジの心境。
最初の速球を空振り、次のカットボールをやっと当ててファールにしたが、3球目の速球にまたしてもびっくりしたようなスイングで空振り三振。
サッときびすを返してダグアウトに戻っていく姿だけがかっこよかった。
せいぜいびっくりすればいい。今のうちにたくさんびっくりしておいて、それでお返しに、何年かしてまわりをびっくりさせるような選手になってやれば、それでいい。
松坂大輔の事件は、野球の変質。
キャンプめぐりの最中にも、さまざまなニュースが飛び交う。
中でも、松坂大輔投手の“事件”は、衝撃的な出来事だった。
実は去年ぐらいから、キャンプに来ているファンたちが、誰と握手した、誰を触った……その回数と相手の“質”を競い合っている。そんな会話を耳にしていたからだ。
最近のキャンプ地は、ずいぶんとファンに親切になった。
ブルペンなんて、かつては秘密の場所で、報道の人間も限られた時しか入ることを許されなかった。
それが今は、ブルペンの横に観客席まで作ってくれて、いつでも見られるようにしてくれている。これは、ファンに対する球団からのサービス、“厚意”であろう。
だからといって、それを決して勘違いしてはいけない。
キャンプ会場は年々テーマパークのような仕立てになっているが、選手たちはディズニーランドのミッキーマウスじゃない。選手は、チームの大切な財産なのだ。ファンとチームの期待を担い、それぞれの生活を賭けて、懸命に練習に励む生身の人間である。叩かれれば痛いし、引っ張られれば体を痛める。
民度が下がれば、制約の数は必ず増える。
選手たちがチームの大切な財産なのであれば、チームを愛するファンにとってもまた、かけがえのない“宝もの”のはずである。