福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が見た森保Jとイランの差。
「メンタルが冷静か、動揺したか」
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/29 17:00
冷静に戦った日本と、アズムンらが苛立ちを隠せなかったイラン。メンタルの差が3-0という結果になったのだろう。
メンタルの安定は絶対に大事。
この先制点以降、イランは同点に追いつこうと前がかりになってきました。一方で焦りもあってか、組織だっていたイランの攻守バランスが崩れ出しました。それもあって日本はカウンターを繰り出しやすくなり、南野が2点目につながるPKを取りました。
ここで2点差になってイランが捨て身の攻撃に出てきても対処して、試合終盤には柴崎と南野の連係から原口が抜け出して試合を決定づけるゴールを奪った。日本としてはまさに理想的な試合運びだったと言えるでしょう。
判定に納得いかず、思い通りのプレーができなかったイランは怒りを抑えきれず、試合終盤に小競り合いが起きました。特にアズムンは、フラストレーションを爆発させていましたよね。それに対して日本は冷静に対応し、相手からの挑発に乗らなかった。これを見て頼もしさを覚えました。
スポーツは何の競技でも共通だと思いますが、メンタルの安定が絶対に大事です。自分たちの持っている力を出すためには、想定していない状況に対しても動揺しないことが必要となる。その辺りが両チームの出来を分ける大きな差となったのだと感じます。
大迫と南野の連動、万能な塩谷。
選手それぞれのプレーを見ても、準々決勝以前と比べて良い部分が多く見られました。これはやはり大迫が最前線に戻ってきたからこそで、特にトップ下の南野との関係性がスムーズでした。
大迫がポストプレーするために少し引いてきたら、南野がトップの位置に出ていく。逆に南野が前に入り込んできたら、大迫はあえて“逃げる”動きでスペースを作り出してあげていましたね。
後半途中に遠藤が負傷退場したのは気がかりですが、途中出場した塩谷はその不安を払拭してくれるような素晴らしいプレーでした。
グループステージのウズベキスタン戦での活躍で、コンディションも気持ちの面も乗っているでしょうし、イラン戦でも突然の出場となったわけですが、守備の局面での強さ、危機察知能力の高さで相手の攻撃をしっかりと防いでいました。
塩谷はサンフレッチェ時代、森保監督のもとで3バックを任されていました。ただ攻守ともに慌てることなく、ボールをつなげるので、ボランチでも十分プレーできる。日本にとっては本当に貴重な万能タイプとなっています。
もし遠藤が決勝に出られない場合、ボランチは柴崎と塩谷のコンビで行くのが濃厚ですが、塩谷の充実ぶりを見ると先発でも問題ないと思います。イラン戦で積極的な飛び出しを見せていた柴崎となら、攻守の役割分担としてもいい関係性を作れるのではないかと。