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日本プロテニスに「選手会」発足。
“家庭を持つ30代”としての行動。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/01/02 10:00
プロテニス「選手会」会長に就任した添田豪。コート外でも活躍が期待される。
ツアーのシステムが変更。
表現を変えれば、これほど世界的にテニスが人気になり、国内にもスター選手がいてファンも増えているというのに、日本の協会も、メディアもこの景気を生かしきれていないという状況に、選手たちがしびれをきらしたというところなのかもしれない。
さらに彼らの動きを急がせたのは、2019年からのツアーのランキングポイント・システムの大胆な変更だ。具体的には、プロツアーの底辺にあった「フューチャーズ」の中でも賞金総額の低い1万5000ドルの大会で、ATPポイントが獲得できなくなる。
このクラスの大会は2019年から「トランジション・ツアー」という名に変わり、ここで獲得できるのはATPポイントでなく「エントリーポイント」。このポイントをもとにした「ITFワールドテニス・ランキング」が新設され、その上位選手は、1つ上のカテゴリーである2万5000ドルの大会やさらに上のチャレンジャー・ツアーの予選に出場することができる。
ランキング保持者を750人に。
そこで初めてATPポイントを獲得するチャンスがあるのだが、そのためには2万5000ドルの大会の場合、決勝に進出しなくてはならない。
ATPツアーに到達するまでの距離が長くなり、ハードルが上がるという印象を受けるが、ATPは「力のある選手がよりスピーディにATPツアーレベルへ進める」と考えている。
ジュニア・ランキングの上位選手のためにもトランジション・ツアーの本戦ドローに一定枠を設けており、若く将来性の高い選手、実力ある選手が優遇されるシステムだ。そして、それ以外の多くのプレーヤーを切り捨てるシステムともいえる。これにより、ATPは現在2000人あまりいるランキング保持者の数を750人まで減らそうとしている。
ATPポイントを1ポイントでも持つ選手は世界ランキング保持者となるが、日本には現在9位の錦織圭を筆頭に2042位まで66人がいる。このうち、従来のフューチャーズを主戦場にする選手は3分の2を超える。監事の松井も会見の中で「多くの選手がプロであってプロでなくなってしまう」と切実な状況を訴えたが、一体何人が生き残れるのか――。