スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
H・ベインズとM・リベラ。
メジャー殿堂入りの基準を見直すと。
posted2019/01/05 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
今年も、野球殿堂入りの選手が発表される時期が近づいてきた。BBWAA(全米野球記者協会)の投票による発表は1月22日だが、昨年12月初旬には、それに先立ってヴェテラン委員会による推薦選手2名の殿堂入りが決まった。
この人選が物議を醸している。
ヴェテラン委員会では、野球史を4つの時代に区切り(草創期=1871~1949、黄金期=1950~69、現代野球=1970~87、トゥデイズ・ゲーム=1988~現在)、ブロック別に殿堂入り選手を選ぶ仕組みにしている。
昨年は〈現代野球〉のカテゴリーから、ジャック・モリス投手とアラン・トラメル内野手が選ばれたが、今年は〈トゥデイズ・ゲーム〉のカテゴリーから、リー・スミスとハロルド・ベインズのふたりが選出された。
通算セーヴ478を記録したスミスは満票(16票)を獲得し、通算2866安打のベインズも12票を得てぎりぎりで条件(75%以上)を満たした。
スミスの478セーヴは、史上第3位に当たる。マリアーノ・リベラの652セーヴや、トレヴァー・ホフマンの601セーヴには及ばないものの、これは堂々たる数字といってよい。
物議を醸したベインズ選出。
物議を醸したのはベインズのほうだ。22年間も大リーグで働き(主にDH)、40歳を過ぎて打率3割と25本塁打を記録したのは立派だが、WARの22年間トータルが38.7というのはいかにも寂しい。これはスティーヴ・ガーヴィやポール・オニールとほぼ同水準だ(ふたりとも殿堂入りは果たせなかった)。
BBWAAの投票率を見ても、候補になっていた5年間で、ベインズは6.19%より多い票を獲得したことが一度もない。
もしかするとこれは、いまだ殿堂入りを果たしていない(今回で候補になって10年目)エドガー・マルティネスや、これから候補に入るはずのデヴィッド・オルティース(2022年から有資格者になる)といった専任DHに道をつけるための地ならしではないだろうか、という声も聞こえてくるほどだ。