球体とリズムBACK NUMBER
マリノスの変化は確実に進んでいる。
ポステコグルーが掲げる志の壮大さ。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/01/01 11:00
ポステコグルー監督の哲学はJリーグの中でも尖っている。それだけに、まだチームの天井は見えない。
日本なら、自分の指導が生きる。
しかし当然、「革命」が静かに進むことはなかった。とくに彼の任務の終盤には結果が伴わず、ゆえにロシアW杯予選でもプレーオフに回ることになり、批判も受けた。個人的にも2017年8月の日本戦を観た時、サッカールーズには彼の手法よりも、高い身体能力を生かすやり方のほうが適しているように見えた。オーストラリアの一部のメディアがずっと主張していたように。
彼の国でその勇敢なスタイルが全面的に受け入れられることは、最後までなかった。だからもしかしたら、彼は育った国のフットボールを取り巻く環境に失望したのかもしれない。そして最低限の任務を果たした直後に、「後悔はない」という言葉とともに代表監督の座を辞し、横浜からの依頼を引き受けた。
技術を尊ぶ日本なら、自分の指導が生きるかもしれない。そんな希望もあったのではないだろうか。
マリノスの伝統も守備的だった。
奇しくも、マリノスの伝統のスタイルも彼の手法とは相容れないものだ。そんなクラブでも自身のフィロソフィーを貫き、よく言えば清々しく、逆に言えば玉砕覚悟にも見える超攻撃的なサッカーを展開した。
1年目の最終成績は12勝5分17敗の12位。得点は優勝した川崎フロンターレにひとつ足りない56(2位)だが、失点も名古屋グランパスとV・ファーレン長崎に次ぐ56(16位)だ。リズムに乗った時は爆発するが、発展途上の組織が崩壊することもある、ハイリスク・ハイリターンのフットボール。客観的な評価はその辺りに落ち着くだろう。
練度が高まってきたかと思えば、研究されて大敗する。8-2の圧勝の直後に2-5の完敗なんてこともあった。そして日本にもオーストラリアと同様に、彼の戦術の粗を指摘し、真っ向から否定する人もいる。