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マリノスの変化は確実に進んでいる。
ポステコグルーが掲げる志の壮大さ。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/01/01 11:00

マリノスの変化は確実に進んでいる。ポステコグルーが掲げる志の壮大さ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

ポステコグルー監督の哲学はJリーグの中でも尖っている。それだけに、まだチームの天井は見えない。

選手は現在のスタイルを喜んでいる。

 ただし本人が明かすように、選手たちは彼の指導を喜び、楽しんでいる。「(今のマリノスでは)ボールを受けた後にターンをしなければ怒られるので」と天野純は嬉しそうに言い、「このサッカーによって、すごく注目してもらった」と山中亮輔は正直な実感を打ち明ける。

 この2人の主力は、27歳と25歳で代表初キャップを刻んだ。また大津祐樹は中盤の新たな役回りで輝き、ローン先から戻ってきた仲川輝人は一気にブレイクし、GK飯倉大樹はモダンな守護神として足元のスキルを磨いた。そして何より、観ている者たちをワクワク(時にハラハラ)させた。

 同じシティ・フットボール・グループのひとつということもあり、今のマリノスのスタイルにはマンチェスター・シティの影響が見て取れる。本家のペップ・グアルディオラ監督が志向するのは、相手を完全にねじ伏せようとする攻撃的なフットボールであり、サイドバックの偽ボランチ化なども、高い位置に多くのポイントを作るために採用しているものだ。

 それが現在のマリノスの戦力に見合ったものかはわからないし、完成までには多大な時間と労力を要する。いや、完成するかどうかも不明だ。

リーグタイトルは2004年が最後。

 ただしクラブの歴史を考慮すれば、横浜はそんな高い志を掲げるべき時を迎えているのかもしれない。1972年創部の日本サッカー界を代表する名門のひとつながら、リーグタイトルは2004年が最後。トロフィー奪還と未来の繁栄を目指す上で、モダンで明確なスタイルの確立は正しい一歩と言える。

 近年、サンフレッチェ広島と浦和レッズがミハイロ・ペトロヴィッチ政権後にリーグ優勝やアジア制覇を、川崎フロンターレが風間八宏政権後にリーグ連覇を成し遂げているように、ポゼッションの浸透したチームがマイナーチェンジを施して成功をつかんだ例がある。ポステコグルーの遺産は、先々にも生きてくるはずだ。

【次ページ】 ペップも1年目は無冠だった。

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