プレミアリーグの時間BACK NUMBER
吉田麻也は監督交代に明るい表情。
「サウサンプトンに合っている」
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2018/12/08 16:30
吉田麻也は今季もサウサンプトンで出場機会を確保している。新監督の戦術にもハマりそうだ。
プレミアでも前からの守備が流行。
もちろん、時代の流れに乗れば良いというものではない。しかし、サッカーも「生き物」だ。
かつては「守高攻低」と言われたプレミアでも、今季の現監督20名中11名が、ハイラインをリスクとは考えず、ポゼッション重視のサッカーに必要な能動的な守りの手段と認識している。
最新の11人目となったのが、ヒューズ解任の翌々日に就任が発表されたラルフ・ハーゼンヒュットルだ。ブンデスリーガ昇格1年目だったライプツィヒを、攻めの基本姿勢を貫いて欧州進出へと導いた51歳は、年齢こそヒューズより4歳若いだけだが、監督としての志向性は大きく異なる。
これは余談だが、筆者が抱いた見た目の第一印象は、「若い頃のトニー・モウブリー風」というもの。昨年からブラックバーン(2部)を率いるモウブリーは、タフな元DFだが、「素早く繋いで攻めるサッカー」を信条とする55歳の英国人監督だ。
サウサンプトンが退化した2年半。
実際のハーゼンヒュットルはというと、3年前からリバプールで指揮を執るドイツ人監督、ユルゲン・クロップの「オーストリア版」と評されている。
同じ「今風」の顔ぶれには、今年5月末にエバートンの新監督となったマルコ・シウバもいる。サウサンプトンがプレミアのポルトガル人指揮官に興味を示したのは、シウバがハル(現2部)で指揮を執っていた一昨季後半。
ピュエル新体制下にあった自軍が、結果的にはリーグ8位とリーグカップ決勝進出という成績を残すことになったものの、予想外に無難な戦い方を好んだピュエルの下で、チームの特徴でもあった生気が失われ始めたシーズン中のことだった。
2012年に2部から昇格したサウサンプトンは、ポジティブの塊のようなナイジェル・アドキンス(現ハル監督)に率いられ、威勢の良い攻撃的集団としてプレミアに戻って来た。後を受けたマウリシオ・ポチェッティーノ(現トッテナム監督)の就任でプレッシング・サッカーという明確なスタイルを与えられ、続くロナルド・クーマン(現オランダ代表監督)の下では、トータル・フットボール色も加えられることになった。
しかし、揃ってヘッドハントされて去っていった両監督の後、ブレーキをかけた格好のピュエル、自身の最強イレブンすらわからずじまいだったマウリシオ・ペジェグリーノ、そして前監督となったヒューズと続いた過去2シーズン半で、チームの進化は滞った。
そう理解すれば、ファンが望み、フロントも認識していた進化の方向性の面では、サウサンプトンにとって適切な選択が今回の監督交代でなされたことになる。