フランス・フットボール通信BACK NUMBER
アジア杯シリア監督、シュタンゲ。
戦争に負けず生きる70歳の半生。
posted2018/12/11 07:30
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
Soccer Iraq
読者の皆さんはベルント・シュタンゲを覚えているだろうか。かつてのイラク代表監督であり、ロシアワールドカップ2次予選ではシンガポール代表を率いて日本を苦しめたドイツ人の名伯楽がシュタンゲである。2010年9月には、ベラルーシ代表監督としてスタッド・ド・フランスでフランス代表をも破っている。
一度は監督生活からの引退を表明したシュタンゲが、この1月からシリア代表監督を務めている。シリアは来年1月に開催されるアジアカップに出場する。日本がグループリーグ2位通過の場合には、ラウンド16で対戦する可能性があるチームである。
旧東ドイツ代表やドイツのクラブチーム、アジア各国の代表チーム監督を歴任した70歳の老将は、どうして現役復帰を決めたのか。『フランス・フットボール』誌11月20日発売号でアレクシス・メヌージュ記者が、数奇な運命を辿ったシュタンゲの経歴を、彼の肉声とともに紹介している。
監修:田村修一
「政治的なことは一切話したくない」
ベルント・シュタンゲと連絡を取るのはひと苦労である。
自宅に電話をかけても、彼の妻ですらもう幾週間も音信不通であるという。実のところシュタンゲは、来年1月に開催されるアジアカップの準備を、シリア代表とともに首都ダマスカスで進めている。ようやく繋がった電話でシュタンゲは、インタビュー形式で掲載しないのを条件に、新たに挑もうとしているチャレンジのすべてを語ることに同意したのだった。
「テーマはサッカーだけにしてくれ。政治的なことは一切話したくない。
選手たちは自分の意見を表明するのを禁じられている。私も表立っては何も言われていないが、同じ立場にあると認識している。
もちろんその気になれば何でも喋れるが、敢えて波紋を生じさせたくないからね」