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伝統の早慶戦で観たラグビーの妙。
“指示無視”の選手がいてもいい。
posted2018/11/27 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
やっぱり、早慶戦はいい。
早稲田、慶応ともに、好感が持てた。よく相手を分析し、指導陣が正しい処方箋を書き、真面目に練習を重ねてきたことがうかがえる試合だった。
早稲田はディフェンスでよく相手を分析し、それを遂行していた。
自陣ゴールラインを背負ってのラインアウトでは慶応に競りかけ、相手ボールを奪取。エリアを読み、いいタイミングでリフティングが行われていた。
そして慶応のアタックの起点であるSH江嵜真悟を徹底的に封じ、大きなゲインを許さなかった。慶応のSO古田京主将が、「結局、トライが2本しか取れなかったのが敗因です」とコメントしたが、これは早稲田の研究と努力の成果だろう。
一方の慶応も、早稲田のセットプレーからの攻撃をよく止めていた。前半のモールからのトライは防ぎきれなかったものの、BKの仕掛けに対しては慶応らしい気持ちのこもったディフェンスを見せていた。
早稲田の才能と2つのトライ。
早大の相良南海夫(さがら・なみお)監督は、「我慢比べになると思ってました」と話したが、両軍ともに練習のコンセプトが見える防御態勢を見せた。
ただし、勝負は真面目に積み重ねてきたことだけで決まるわけではない。
後半の早稲田のSH齋藤直人、CTB中野将伍のふたつのトライは、「才能」の爆発が生んだトライだ。
特に後半12分、慶応が19フェイズまでアタックを重ねた末にノックオンをすると、早稲田の1年生FB河瀬諒介が素晴らしいランで3人をかわした上に、アンダーハンドからの柔らかいパスを高校の同級生であるWTB長田智希に渡す。
快足の長田は、将来の日本代表になるであろう齋藤にパスをつなぎ、電撃的なトライを奪った。真面目に慶応が積み重ねてきたことを、一瞬にして早稲田の3人が奪い去ったのである。