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伝統の早慶戦で観たラグビーの妙。
“指示無視”の選手がいてもいい。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2018/11/27 07:00
慶応を下して1敗を守った早稲田。次週の早明戦は、ともに久々の対抗戦優勝を懸ける決戦となる。
早稲田の陶酔感あるBK陣。
大学選手権を睨んだ場合に鍵を握るのは、早慶戦では途中からの出場になったFB丹治辰碩だろう。大学1年生の時はラグビーではなく、ゴルフを突き詰めようとしていた変わり種は、「転調」を奏でることが出来る慶応では稀有な人材だ。
ケガ明けで本調子ではなかったが、大学選手権で丹治の自由奔放なプレーが炸裂すれば、慶応は面白い存在になる(ただし、彼のブレイクはターンオーバーで終わることも多く、それが改善できれば、という話)。
早稲田に関しては、卒業生の期待がにわかに高まっている。ジャージには白い襟が復活、そして久しぶりに陶酔感のあるBKが出来つつある。今季のメンバーの能力は、早大史上最高ではないか。
たとえば、1987年度に東芝府中を破って日本一になったチームのBKのメンバーで、その後に日本代表になった選手は、SH堀越正巳、CTB今駒憲二(ご子息が今度の花園に早稲田実業のウィングとして出場する)、同じくCTB藤掛三男、そしてWTB今泉清の4人だ。
才能あふれるメンバーが中心ではあったが、公立校出身の努力家も混じっていた。それが早稲田だった。
各ポジションに学生屈指の逸材。
ところが、今季の早稲田は違う。正真正銘の才能が9番から15番まで揃う。
SH齋藤の作り出すテンポは、これぞ「早稲田」であり、伸び悩んでいたSO岸岡智樹は早慶戦で55mのドロップゴールを決めるなど、ゲームコントロールに冴えを見せた。
CTBの中野将伍、桑山淳生は体を張ったアタック、ディフェンスが光る。どちらかといえば「明治キャラ」だが、だからこそ早稲田にとっては貴重な人材だ。
WTBの古賀由教は決定力と生真面目さが共存し、トライを演出した長田と河瀬の東海大仰星の高校日本一メンバーは、すでに学生屈指の逸材だ。