野球善哉BACK NUMBER
甲斐キャノンの力を数字で知りたい。
「二塁送球1.8秒」の出所はどこか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2018/11/24 11:30
広島の機動力をシャットアウトしたソフトバンク。その中心は甲斐拓也だったが、投手たちの貢献も大きかった。
盗塁阻止は「投手のおかげ」でもある。
バンデンハークはいう。
「シーズン中からクイックなどについてはずっと取り組んでいたんだ。誰が一塁ベースにいるのか、カウントはどうなのか、状況判断をしてクイックについては使い分けができるようになった。
シーズンの最後になってうまくできるようになった。これからも取り組んでいきたいと思うが、日本シリーズでうまくいったのは拓也がいたからだ。彼のおかげで余裕を持つことができたからね」
甲斐が盗塁阻止について問われるたびに「投手のおかげ」と口にするのは、バッテリーの共同作業という認識があるからだろう。甲斐によれば「速いクイックで投げるサインもある」という。
バンデンハークと甲斐の話を聞いていると、盗塁阻止は想像以上に奥深いものであることが分かる。
セカンドスロータイムの出所はどこ?
ただ一方で、日本の報道は曖昧だなとも思う。
甲斐のセカンドスローは1.7秒~1.8秒と言われているが、一体、それはどこから出てきた情報なのだろうか。甲斐の肩の強さを表現したい気持ちはわかるが、発表元も分からない曖昧な数値を報じることは、報道の本質を損なうものであると思う。
実際、甲斐が弾き出すタイムがいかほどかは誰も知らないのではないか。
ここで考えて欲しいのは、“甲斐キャノン”が卓越したプロフェッショナルの技であると誰もが知っているのに、野球ファンやメディアはそのスゴさを数値で知ることができないという事実である。