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DeNAドラ2の株がこの秋、急上昇。
伊藤裕季也に漂う新人王の予感。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph bykyodo News
posted2018/11/21 08:00
明治神宮大会決勝の8回、逆転ツーランを放った伊藤は打った瞬間にガッツポーズ。
目標とするタイプは井口資仁。
目標とする選手は現千葉ロッテ監督の井口資仁だと言う。
「打点とホームランと盗塁、というあまりないタイトルの取り方と言いますか。自分の場合は足があまり速くないんですけど、坂田監督から足が速くなくても盗塁はできると教わってきた。だからそこを活かしながら、3つのタイトルを獲れるような選手になりたいです」
その野球観に彼の明るい未来を想像する。今秋のドラフトで伊藤を獲得した横浜DeNAの界隈では早くも新人王候補の声がかかるほど、楽しみな逸材だ。
この秋は“できすぎ”とも言える伊藤の活躍だったが、4年間すべてが順風満帆というわけではなかった。
スタメンを任されるようになったのは大学2年時。当時、立正大学は東都大学野球連盟2部に所属していた。
「正直、1、2年生の頃は監督が言う“守り勝つ野球”にピンとこないところがありました。2年生から試合に出させてもらいましたが、サインプレーや一球ごとのプレー、『なんであの場面はエンドランだったんですか?』など、最初は疑問が多々ありました。ただ理解を深めていく中で、監督は凄く根拠のあることを示してくれていると徐々に分かってきました」
それ以降、伊藤は野球の奥深さを楽しめるようになったという。
主将としての苦悩と。
しかし、その途中で挫折も味わった。主将に任命された昨秋、意気揚々と新チームのスタートを切ったが、春のリーグ戦では3連敗スタート。チームをまとめるのに自分が何をするべきか苦悩の日々が続いた。
そんな伊藤を救ったのはチームメートの存在だった。
「4年生を中心に引っ張ってくれる選手が多かったので、そういうところは本当に助けられました。何もできない自分の苦しさとかも傍で感じてくれて……」
グラウンドだけではない。それはスタンドで応援する部員たちも一緒だった。味方が劣勢のときは、近くの仲間が意識的に声を出し、“勝てる”雰囲気作りを行った。
「スタンドも、ベンチにいる選手もそこを一番こだわってやってくれるので、出ている選手は凄くやりやすかったです。周りの選手のおかげで(自分も)楽にプレーができるのもあった。そこはスタンド、ベンチにいる選手も同じだから、こういう雰囲気が生まれているのだと思います」