JリーグPRESSBACK NUMBER
J1昇格がなくても。町田ゼルビアに
培われた相馬監督の鹿島イズム。
text by
郡司聡Satoshi Gunji
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/11/20 10:30
川崎フロンターレを経て町田ゼルビアの監督に就任した相馬直樹監督。その手腕は今季のJ2を大いに沸かせた。
「選手に無理しか言ってない」
最終節を2日後に控えたシーズン最後の囲み取材の折、相馬監督は「だいたい僕は選手たちに無理しか言っていないですから」と本音を漏らした。
ワンプレーごとや“キワ”の攻防にこだわり、ボールに対して一歩でも半歩でも寄せる。それをひとつひとつ積み重ねることで、ギリギリの攻防を制してきた。とはいえ、言葉で言うほど、それを42試合という長丁場のリーグ戦で実践し続けることは簡単ではない。
だからこそ、指揮官は「いろいろなことに折り合いをつけて、ここまで戦い抜いてくれた選手たちに満員のスタジアムで戦わせたい」と願っていた。
こうして指揮官の願い通りに、優勝の可能性を残して迎えたホームでの最終節は、前売り時点でチケットが完売。2016シーズンのJ2開幕戦・セレッソ大阪戦以来となるクラブ史上2度目の観衆1万人越えを果たした。
J2最小クラスの予算規模でも。
試合はJ1参入プレーオフ出場権確保に燃える東京Vを相手に、後半に入ると攻め込まれる展開が続いた。しかし、最後の局面では深津や酒井ら最終ラインの選手が体を張ってシュートをブロック。1失点は喫したものの、“キワ”の攻防にこだわる町田らしい戦いぶりだった。
被シュート数の少なさはリーグトップクラス。まさに相馬ゼルビアの強みを証明するデータの1つだろう。しかし、結果は残酷にもあと1点が及ばず。1-1の引き分けに終わり、首位の背中を捕えることはできなかった。
「1位から4位まで可能性がある中で一番望んでいなかった4位」(相馬監督)に終わった町田は、明確な何かを手にしたわけではない。
それでも、J2最小クラスの予算規模である町田が相馬監督の下、チームが結束し、最後の最後までJ2制覇の可能性を残したという事実は決して色褪せない。「この結果には胸を張ってもいいと思う」と話した中島の言葉に、異を唱える者は少ないだろう。