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錦織圭の工夫とフェデラー撃破。
“勝ちビビリ”は微塵もなかった。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2018/11/12 12:40
久々にフェデラーに勝利した錦織圭。この勢いに乗れば……という期待感を抱かずにはいられない。
秋の好調さは維持している。
そもそも錦織の調子は悪かったのか。錦織自身は「内容はそんなに良くなかったが」という言葉で試合を振り返っている。
しかし、試合前の練習ではリラックスして腕を振り、ショットはよく伸びていた。実際、序盤も、試合が緊迫してきても、おおむね腕はよく振れていた。秋の室内ハードコートシリーズの好調さは維持していると見ていいのではないか。
ならば、なぜウィナーをはるかに上回る22本のアンフォーストエラーをおかしたのか。
錦織は「(大会の)1試合目だったのもある。パリのあと少し休みをとったこともあり、リズムが若干抜けていたのも。この大会のボールが、飛んじゃったり、ちょっとやりにくいのも多少、原因としてあるのかな」と要因を並べたが、フェデラーの会見でのコメントも見逃せない。
「我々は2人とも少し緊張していたようだ」
「今日は勝たなくてはいけない」
直近の3大会より明らかに遅い、とコートサーフェスに違和感を持っていたフェデラーは、試合の重圧が加わり、最後までショットの精度が上がらなかった。錦織にも緊張や気負いはあっただろう。
相手がフェデラーとはいえ、同じ相手に4年8カ月も勝っていなかったのだ。今度こそ、ショットが好調な今こそチャンス、という思いが気負いを生んだのではないか。ダウン・ザ・ラインなど、攻撃的なショットの精度が低かったのは、そのせいだろう。
自分も相手もベストではない中で、錦織は「今日は勝たなくてはいけない試合」と感じていた、という。対戦の前には「彼と対戦するのはいつも楽しいし、僕にとって大きな挑戦」と話していた。ただ、「勝たなくてはいけない」とか、勝てそうだ、となったら気持ちに変化が起きてもおかしくない。