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コーラの頭脳と勝利への総力戦。
レッドソックス圧勝劇の舞台裏。 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byAFLO

posted2018/11/10 17:00

コーラの頭脳と勝利への総力戦。レッドソックス圧勝劇の舞台裏。<Number Web> photograph by AFLO

5年ぶりのワールドシリーズ優勝を祝い、トロフィーを掲げるレッドソックスのアレックス・コーラ監督と選手たち。

信頼できる中継ぎを使わず。

 もうひとつ、どうにも解せなかったのは、第4戦で、最も信頼できる中継ぎ投手のペドロ・バエスを出場させなかったことだ。理由は、第1戦から第3戦まで、連続3試合に登板しつづけたこと。

 レギュラーシーズンなら妥当な措置だろうが、ワールドシリーズは「明日なき戦い」である。終了すればゆっくり休めるのだし、なによりも前日(第3戦)の死闘を制して、ドジャースは逆転へのモメンタムをつかみかけていた。バエスもそれまでの3試合合計で3回3分の2を投げ、1安打3四球1失点の健闘を見せていた。

 にもかかわらず、第4戦のマウンドに、バエスは登らなかった。6人の救援投手が次々と打ち込まれる姿を見て、「バエスはどこだ?」と叫んだドジャース・ファンは、かなりの数にのぼると思う。

 かくてドジャースは敗れ、レッドソックスは栄冠を手にした。だがもし第4戦で、ロバーツ監督が采配を誤らなかったとしたら、これほど一方的な結果は生まれなかったはずだ。

 戦術においても、人心収攬(しゅうらん)術においても、コーラ監督はロバーツ監督を圧倒した。ドジャースやレッドソックスで地味な内野手として活動していたころから、「野球的頭脳の最も高い選手」と評されたコーラが、ついに大輪の花を開かせたというべきか。賞賛の拍手を送りたい。

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