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コーラの頭脳と勝利への総力戦。
レッドソックス圧勝劇の舞台裏。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byAFLO

posted2018/11/10 17:00

コーラの頭脳と勝利への総力戦。レッドソックス圧勝劇の舞台裏。<Number Web> photograph by AFLO

5年ぶりのワールドシリーズ優勝を祝い、トロフィーを掲げるレッドソックスのアレックス・コーラ監督と選手たち。

敗戦後に労ったコーラ監督。

 レギュラーシーズンのレッドソックスは、大体5人で先発をまわしていた。クリス・セール、デヴィッド・プライス、リック・ポーセロ、エドゥアルド・ロドリゲス、そしてイーヴォルディの5人だ。

 この5人のうち、ポーセロを除く4人が、今年のワールドシリーズでは、そろって救援のマウンドを踏んでいる。働き頭は、3試合に登板し(先発が2試合、救援が1試合)、13回3分の2を投げたプライスだが(ワールドシリーズに弱いという汚名を完全に返上した)、この総動員態勢は2017年の覇者アストロズの戦い方を彷彿させる。

 アレックス・コーラをベンチコーチに擁していた'17年のアストロズは、チャーリー・モートンを先発と救援でフル回転させ、対戦相手ドジャースの息の根を止めたのだった。イーヴォルディやプライスの使い方は、モートンの起用法に似ていないか。

 さらに付け加えるなら、脳裡にはっきりと残ったのは、ベンチに戻ったイーヴォルディを温かく迎えるチームメイトの姿だった。聞くところによると、その直後、コーラ監督は選手全員をクラブハウスに集め、イーヴォルディの健闘を名指しでねぎらったそうだ。

ドジャースはなぜ総動員せず?

 一方のドジャースは、総動員態勢を取らなかった。第3戦の死闘を制し、第4戦でも6回裏まで4対0とリードしながら逆転を許してしまったのはなぜだろうか。

 ひとつはもちろん、レッドソックス打線の粘りだろう(2死から得点を重ねる。2ストライクからヒットを打つ。ワールドシリーズでの得点圏打率は3割5分3厘に達した)。

 第2の理由は、伏兵の活躍だ。第4戦では、ミッチ・モアランドとスティーヴ・ピアスが大活躍したが、その他の試合でも、エドゥアルド・ヌーニェス、クリスチャン・バスケス、ブロック・ホルトといった脇役が渋い打撃で勝利に貢献した。

 戦前、破壊力の大きさが強調されていたレッドソックス打線は、驚くほどバットを短く持ち、反対方向へのヒットをこつこつと積み重ねていった。それにひきかえ、NLCS後半でスモールボールの傾向を覗かせて期待値を上げていたドジャースは、ワールドシリーズに入ったとたん、一発狙いの大味野球に逆戻りしてしまった。ワールドシリーズでの得点圏打率は2割ちょうど。デイヴ・ロバーツ監督の采配にも責任があると思う。

【次ページ】 信頼できる中継ぎを使わず。

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