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イタリアの希望、F・キエーザ。
ネイマールを教訓に“愛の鞭”を!
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto press
posted2018/11/07 08:00
フィオレンティーナ、そしてアッズーリで期待を一身に集めるF・キエーザ。
今やイタリアの希望に。
フィオレンティーナの下部組織出身で「ビオラ(フィオレンティーナの愛称)の至宝」と言われていたキエーザが、「アッズーリ(イタリア代表)の希望」とまで言われるようになったのは最近だ。高速のドリブルで右サイドからでも左サイドからでも切り裂けるウイングは、持久力が高く、守備でも貢献できる。
闘争心旺盛で、21歳の若さなのに、ベテランのような風格すら漂わせる。イタリアの希望の星と目されるのは、率先してリスクを取れる「ペルソナリタ」の持ち主でもあるからだろう。批判を恐れ、責任を取りたがらないプレーヤーはイタリアで言うところのペルソナリタがない、つまり「パーソナリティ」がないと評される。
欧州の多くのメガクラブが関心を寄せるようになり、早ければ来夏にもキエーザの争奪戦が繰り広げられるだろう。入札の最低価格は7000万ユーロ(約91億円)とも見積もられる。まだ20歳だった今年の3月にはイタリア代表での初キャップを刻み、そのまま順調に定着しつつある。
ネイマールの話を持ち出して。
10月25日の誕生日で21歳になったばかりの、未来が大きく広がる「アッズーリの希望」だからこそ、同じイタリア人のガスペリーニは“義憤”に駆られもして、「罰せられなければならない」とメディアを介してではあるが、強い言葉をぶつけたに違いない。こうも言っている。
「我々のカンピオナート(セリエA)の最高の若手のひとりが、こういう振る舞い(シミュレーション)に慣れてしまっている。その代償をしっかり払わせておかなければ、間違った教育になってしまう」
フィオレンティーナの監督(ステファノ・ピオリ)やファンなども巻き込み、この騒動はしばらく尾を引いた。論戦の途中、ガスペリーニがネイマールの話を持ち出したのは、ロシア・ワールドカップでの“過剰演技”が大きな批判に晒され、それがむしろこのブラジル代表FWの良薬になったと考えているからだ。
「シミュレーションはネガティブな模範になってしまうのだと、ネイマールはどうやら気が付いたようではないか」
W杯後、フランス(パリSG)に戻ったネイマールが襟を正し、復活を遂げているというニュースは、イタリアにも届いている。