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イタリアの希望、F・キエーザ。
ネイマールを教訓に“愛の鞭”を!
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto press
posted2018/11/07 08:00
フィオレンティーナ、そしてアッズーリで期待を一身に集めるF・キエーザ。
安易なファウルは看過しない。
筆者が思い出すのは、育成年代の指導に真摯に取り組む日本人のコーチに聞いた、教え子たちの安易なファウルを絶対に見過ごさないという話だ。
守備の局面で本当はあと1m全力疾走すれば相手に追いつけるのに、シャツや腕を引っ張って間に合わせてしまえば、どうなるか。そうした誤魔化しの積み重ねが、その子の成長を阻んでしまう。ガスペリーニよりも少し年長のそのコーチは、理由をそう話してくれた。
シミュレーションも同じだろう。誤魔化しが癖になれば、自らの成長を自ら阻み、宝の持ち腐れになってしまいかねない。
かつては名門ユベントスの下部組織でユース年代の選手を数多く育て、育成にも定評のあるガスペリーニの“叱責”に対し、キエーザは多くを語っていない。「自分のプレーに集中するだけ」と報道陣に話した程度だ。
名セカンドトップだった父。
では、この若者に多くの影響を与えてきたと言われる父親はどうか。
フェデリコの父エンリコ・キエーザは、1990年代後半のイタリアを代表するセカンドトップのひとりだった。
当時まだ世界最高峰の舞台だったセリエAで活躍しただけでなく、イタリア代表でも欧州選手権(ユーロ96)で異彩を放ち、1998年のフランス・ワールドカップにもエントリーされている。
それから20年後の現在は47歳となり、週末は息子の試合観戦を欠かさないという往年の名手だが、技術面や戦術面の助言は一切しないと言う。息子に伝えているのは「常に学べ。頭を使え。それだけさ」。
21歳の息子フェデリコも、その通りだと認めている。父親から繰り返し言われてきたのは、「ピッチ上での振る舞い方についてだけ」だと。