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リバプールに尽くせぬ選手は一掃。
クロップは心の底から二冠を狙う。
posted2018/11/03 11:30
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Uniphoto press
「あのころ、いくつもの大きな問題を抱えていた。誰もが自信を失い、誰ひとりとして勝てるとすら思っていなかった」
リバプールのユルゲン・クロップ監督が、着任当時を述懐している。
2015-16シーズン、マージーサイドの空気は芳しくなかった。
現在の主力でもあるロベルト・フィルミーノ、ジェイムズ・ミルナー、ジョー・ゴメスなど8名のニューカマーを迎えたものの、チームの象徴だったスティーブン・ジェラードがLAギャラクシーに去り、有望株のラヒーム・スターリングはマンチェスター・シティに奪われた。
プレミアリーグでウェストハム、マンチェスター・ユナイテッドに完敗し、ヨーロッパリーグではボルドーやシオンなど、勝って当然の相手と引き分けている。
いや、よくよく考えてみれば、2014-15シーズンから崩壊の予兆はあった。
ルイス・スアレスがバルセロナに移籍し、マリオ・バロテッリはあまりにも独善的だった。ダニエル・スタリッジは負傷のため12試合しか出場できず、ファビオ・ボリーニはノーインパクト。困ったブレンダン・ロジャーズ監督(当時)は4-2-3-1、3-4-2-1など、いくつかのフォーメーションを採用したが最適解を見つけられず、前シーズンの2位から6位にランクダウンしている。
ともに戦えるボス、クロップ。
当然、人心がロジャーズから離れていく。
「ジェラードもいないのに、誰に頼ればいいんだ!?」
猜疑心がもたげるサポーターにとって、ポーカーフェイスのロジャーズでは共感できない。彼らは感情移入ができて、ともに戦えるボスを求めていた。
こうして2015年10月8日、クロップはリバプールの監督に就任したのである。
スタートは慎重だった。冬の移籍でも思い切った断捨離はせず、QPRからスティーブン・コーカーをレンタルで獲得した程度だ。補強の権限を与えられなかったとはいえ、まずは選手の適性を判断したのだろう。
その結果、翌シーズンにジョー・アレン、マルティン・シュクルテル、ジョードン・アイブ、クリスティアン・ベンテケなどを放出している。アレンの退団は意外だったが、アイブはプレーに継続性を欠き、シュクルテルとベンテケは鈍重だ。クロップが求めるレベルではなかった。
この人選こそが、クロップのクロップたる所以ではないだろうか。