ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
吉田輝星を1位指名した日本ハム、
緊迫と高揚のドラフト当日舞台裏。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/10/29 17:00
日本ハムは1位指名で吉田輝星の交渉権を獲得した。昨年の清宮幸太郎に続き高校野球のスターが入団することになりそうだ。
金足農が日本を魅了した理由。
少し、メーンテーマの「ドラフト」から脱線する。実習中とみられる作業服を着用した生徒の方々と、校内各所で出会った。皆、屈託がなく礼儀正しい。小職の身分が分からずとも、すれ違えば全員が「こんにちは」と、元気良くあいさつをしてくれた。その校風に、まず感銘を受けた。
同校OBでもある渡辺勉校長を含む、職員の方々も在校生と同じでアットホームである。渡辺校長は言った。
「今、こういう時代に一番大切なのは人とのコミュニケーションだと思うんです。そういうところが重要なんです。生徒たちは社会に出てからそれが分かりますし、人に対してしっかりできないと社会で通用しないと思っているんです」
今年、野球部が夏の甲子園100回大会を一気に駆け抜け、野球ファンだけではなく日本中を魅了した根幹の1つを、垣間見た気がした。
学校の食堂で偶然にも……。
本題へ戻る。同校の方々と、当日に予定されていた指名あいさつの段取りを打ち合わせした。ファイターズからの出席者の栗山監督、大渕隆スカウト部長、白井スカウトよりも先乗りし、到着まで待機することになった。渡辺校長は「お昼、食べましょう。時間ありますから」と、生徒たちが集っていた校内の食堂へ誘導してくれた。「カレーでいいですよね」にもちろん即答すると、同校長がふと指を差した。
「あそこに座っていますよ、吉田は」
その先、何人かの集団の中に食事中の吉田投手がいたのだ。
吉田投手はカレーライスを食べていた。その瞬間は突然、訪れたのだ。あいさつはしたが、お互い少々、戸惑い気味ではあった。それは不意過ぎたからだろう。きっちりと対面する予定だったが、心の準備はしていない。想定外で、不条理な初対面だったのである。
しかも小職は、指名あいさつを控えた栗山監督らよりも先に会ってしまった。思いがけない出来事だったが、ドラフト指名後、吉田選手が初めて接したファイターズ関係者になったことは少々、バツが悪かった。
美味なカレーライスを堪能しながら、ふと思った。
ドラフト会議。少し強引だが、そこで結ばれる縁とはこういうものなのかもしれない。