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カープ大瀬良大地「残像を残せた」。
柳田悠岐の第4打席に、その効力が。
posted2018/10/28 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
「ただ勝つだけじゃなくて、次の日に影響を与えるピッチングをする」
シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手が、日本ハムで絶対エースとして君臨していた頃によく言っていた言葉だ。
日本ハムで最後に投げた2011年は28試合に先発して18勝6敗の成績。中でも特筆すべきなのは10完投、6完封という数字だった。当時のダルビッシュはもはや先発した試合で勝つことだけでは納得しない。それではどんな目標を持ってマウンドに立っていたかというと、自分で試合をコントロールして、その上で相手打線に残像を残すピッチングをすることだったのである。
特に印象に残るのは、得意だったスライダーとカットボール、ツーシームを使って相手打者の内懐を強烈に攻め込むピッチングだ。その内角の残像を強く焼き付けることで、相手の打者のヒッティングゾーンを狂わせる。次に投げる投手の球が多少、甘く入っても強く踏み込ませないような影響を残す投球をする。
それができてこそ、エースと呼ばれるに相応しい投手になれる――当時のダルビッシュはそういう投球内容を意識してマウンドに立っていた訳である。
「残像を残せたと思います」
「やっぱりカットボールとか曲がり球に反応して振ってきていたので、大胆に内角を攻めようと思っていました。残像を残せた? そうですね。できたと思います」
延長12回引き分けに終わった日本シリーズ第1戦。初戦の先発を任せられた広島・大瀬良大地投手がこう振り返ったのは、ソフトバンクの4番・柳田悠岐外野手との対戦だった。
西武とのクライマックスシリーズでは20打数9安打の2本塁打と大当たりした相手主砲をどう封じ込めるか。大瀬良が出したその答えは、徹底した内角攻めだった。