ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
吉田輝星を1位指名した日本ハム、
緊迫と高揚のドラフト当日舞台裏。
posted2018/10/29 17:00
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
1日にすべてを賭ける。北海道日本ハムファイターズの無数の思いが、その時に注がれる。それを背負って1年に1度だけのステージへと向かう者たちが、瞬時の判断でチームの将来像を描いていく。
去る10月25日。ドラフト会議である。
異様な空気に満ちる。グランドプリンスホテル新高輪の一室が、各12球団の控え室である。ファイターズのために準備された部屋の中央には、長机4台を組み合わせたスペースがある。真っ白なテーブルクロスで覆われている。その上には、独自の指名予想が派手に躍るスポーツ紙が各紙数部ずつ置かれている。
各地の逸材たちを網羅してきたファイターズのスカウトの方々は、午後1時過ぎから三々五々、そこを目掛けて集結し始める。本番の約4時間前である。その表情は一様に、晴れやかに見える。
追い掛けてきたアマチュア選手たちの評価に時に心は揺れ、時に指名対象から外す苦渋の決断もして、この日を迎える。最後の最後に推薦した選手たちが、指名されるのか否か。あとは待つのみである。
各スカウトは談笑するものの。
ファイターズの場合は、編成権を持つチーム統轄本部のトップのみが選択権を持つ。それが球団のポリシーであり、スタイルである。スカウトの方々は、この日の最終的な指名候補リストの全容を知らないのである。
すなわち指名の可能性が高いのか低いのかも、明確には把握していない。あとはカバーしているエリアの選手が指名されるのか否かの判断を委ね、待つだけという状況なのだ。
各スカウトの晴れやかさは、覚悟の裏返しのように見える。皆で談笑しながらも、注目選手をマークしてきたスカウトは、少し「心ここにあらず」の雰囲気を感じる。甲子園に象徴される公式戦だけではなく、練習試合やグラウンドへも足繁く通い、才能や適性を見極めてきた1年間。その成果が、この1日で決する。しかもトップの方々へと、命運を託すのである。腹をくくって、祈るような思いでその時を待っているのである。