ぶら野球BACK NUMBER
赤く染まる熱狂の広島の地で、
高橋由伸監督のラストゲームに沈む。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasuyuki Nakamizo
posted2018/10/27 11:30
由伸巨人の乱高下を物語る10月のスポーツ新聞。今季最終盤で燃え上がった巨人ナインの、兵どもが夢の跡、である。
試合内容も気温も寒いっすよ……。
球場に到着すると、三塁側内野席も一面真っ赤だ。
防寒対策でジャイアンツパーカーの上にMA-1ジャケットを着て正解だった気がする。ってこれ黒オレンジカラーだから巨人ファンってバレてるよっ! もういいか、腹を括り菅野タオルを首にかけ試合を見守った。
ゲームは序盤から完全に広島ペース。前夜の第2戦、セットアッパー畠が代打新井さんに同点打、菊池に勝ち越し3ランを食らったダメージはやはり大きかった。あれで神宮球場からのチームの勢いも完全に途切れてしまった。3回裏に丸佳浩のソロアーチが飛び出し3点差。キャプテン坂本勇人のらしくない守備のミスも響き、球場内にはすでにカープ楽勝ムードすら漂っていた。
試合内容も気温も寒いっすよ……。
途中、カープラーメン(700円)を啜り身体を温める。'09年開場のマツダスタジアムは通路が広く、あらゆる角度からグラウンドが見やすい。間違いなく日本最高クラスの球場だろう。
やはり昭和の最後にできた借り物の東京ドームでは限界がある。最近はドームでもスタンドに外国人観光客の姿が目立つようになったが、もしも読売が本気で新球場建設と向き合えば、野球ファンだけでなく、東京観光の新名所としても世界中からツーリストたちが集結するはずだ。そう、日本人観光客がヤンキー・スタジアムへ出掛けるようにだ。
歩きながら無性に腹が立ってきた。
ラーメンを食べ終え、球場内を歩きながら、この数年の由伸巨人のことを考えた。
現役引退即監督、'16年2位→'17年4位→'18年3位という成績で一度も優勝はできなかったが、課題の世代交代はこの3年間で大きく進んだ。
今季は若き4番岡本の成長、吉川尚輝も故障離脱するまでレギュラーを死守し続けた。それが40代前半の青年監督が賭博事件の喧噪の中で苦労して、ようやく“原のチーム”を終わらせたと思ったら、はいご苦労さんとまた3度目の原巨人が始まるわけだ。
高橋由伸、上原浩治、阿部慎之助らは最後の「長嶋チルドレン」である。
長嶋茂雄監督のもとデビューして、巨人戦地上波テレビ時代に主力を張り、名前と顔を世の中に広く知られた最後の世代。球団はその由伸体制を、たった3年で終わらせてしまった。しかも会社内の人事異動のような軽さで、だ。ふざけやがって。由伸はいったいどんな気持ちなのだろうか? 球場内をグルグル歩き回りながら無性に腹が立ってきた。