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赤く染まる熱狂の広島の地で、
高橋由伸監督のラストゲームに沈む。 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byYasuyuki Nakamizo

posted2018/10/27 11:30

赤く染まる熱狂の広島の地で、高橋由伸監督のラストゲームに沈む。<Number Web> photograph by Yasuyuki Nakamizo

由伸巨人の乱高下を物語る10月のスポーツ新聞。今季最終盤で燃え上がった巨人ナインの、兵どもが夢の跡、である。

昔の巨人バブルと今の広島バブル。

「広島ではカープの二軍戦中継が、巨人阪神戦の数倍の視聴率を稼ぐんです」

 駆け足でひとり昼飯をすますと、知り合いの広島ホームテレビのSさんとお茶をした。“カープを知らない、興味ない、乗っかりたい人必見のカープ学習番組”という攻めたコンセプトの深夜番組『カープ道』の関係者で、もちろん熱烈なカープファンだ。

 聞くところによると、広島では土曜日のデーゲーム中継が「カープ二軍戦の地元視聴率は8.7%。巨人対阪神戦は1.4%でした」という状況らしい。ちなみにカープ一軍戦中継は常に25%前後を記録するキラーコンテンツで、CSでは40%近く、後日発表されたこの19日のCS第3戦は49.1%というから驚きだ。

 話を聞きながら、今の“広島とカープ”の関係性は、昭和の時代の“東京と巨人”に似ているなと思った。'83年(昭和58年)巨人戦の年間平均視聴率は27.1%、西武ライオンズとの日本シリーズでは40%を超えている。

 CM広告でも、もみじ銀行店頭の巨大ビジョンで笑う丸佳浩。創建ホームの丸、大瀬良大地、鈴木誠也。中国電力の菊池涼介、エルドレッド。東亜地所の會澤翼、西川龍馬。キリンビバレッジ生茶の新井貴浩、岡田明丈ら多くの選手の顔が広島の街中に溢れているが、これも原辰徳や江川卓ら巨人スター選手が明治製菓や不二家といった数多くのテレビCMに出演していた80年代を彷彿とさせる。

 街の会話では「巨人戦の結果」が、今日のお天気レベルで交わされていたあの頃の風景が現代に蘇った。

 そう、まさに30数年前の日本列島で絶頂期を迎えていたジャイアンツバブルと似た状況が、2018年の広島で再現されているのである。

街全体が「カープ優勝おめでとう!」。

 平成最後の秋、まさにカープバブルど真ん中。繁華街では巨大な「優勝おめでとう」フラッグが掲げられ、宿泊先のホテルフロントでも当然のように「祝 セ・リーグ3連覇」のパネルが誇らしげに揺れている。

 同日に広島興行があるらしい新日本プロレスの鈴木みのるやTAKAみちのくとホテル前ですれ違い、そう言えば内藤哲也もカープファンでコラボグッズを出してたよな……なんつって宿からマツダスタジアムまで歩いていくと、すでにカープのユニフォームを着込んだ多くの地元民や自転車に乗った親子連れの姿が目立つ。

 巨人ユニ姿のファンは大げさではなくほとんどいない。甲子園やナゴヤドームでも体験したことがない完全アウェーの雰囲気だ。前回、マツダへ観戦に来たのはまだ黒田博樹がいた3年前だが、その頃よりも明らかにカープ熱は上がっているように感じられた。

【次ページ】 試合内容も気温も寒いっすよ……。

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