ぶら野球BACK NUMBER
赤く染まる熱狂の広島の地で、
高橋由伸監督のラストゲームに沈む。
posted2018/10/27 11:30
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Yasuyuki Nakamizo
「崖っぷち4位転落」
「由伸監督辞任」
「岡本連発でCS!」
「上原魂の17球」
「菅野ノーヒットノーラン」
10月のスポーツ新聞の見出しを追うだけでも、巨人のドライブ感が半端ない。
毎日何かが起きる。まるでジェットコースターに乗っているかのようなスリリングさ。
皮肉にも、最後の最後で由伸巨人に最も足りなかった「何が起こるか分からない」ドキドキ感がそこには溢れていた。
CS進出は絶望的と言われ、由伸監督の辞任が報じられ、誰もが今季の巨人の戦いは終了と思ったら怒濤の快進撃が始まった。
シーズン最終戦の最終打席で岡本和真が甲子園の左中間席に2打席連発となる33号アーチを放ち、史上最年少で「打率.300、30本塁打、100打点」を達成。2年ぶりのクライマックスシリーズ進出を決め、敵地・神宮球場に乗り込むと由伸政権ベストゲームとも言える戦いぶりで、第2戦では菅野智之のノーヒットノーランでファイナルステージ進出を決めた。
こうなったらマツダスタジアムでその戦いぶりを見届けるしかない。
東京でなんとか連載原稿にひと段落つけると、10月19日の金曜日の朝、広島行きの新幹線に強引に飛び乗った。まるで遠距離恋愛に燃えるOLさんのような情熱の行動だが、残念ながら俺は39歳の巨人ファンのおっさんである。
この時点で、すでに巨人は2連敗を喫し崖っぷち。しかも、絶対に負けられない試合に中4日のエース菅野ではなく、サウスポー今村信貴の予告先発が発表されている。打線も2試合連続で1得点と下降線。もしかしたら、今夜が由伸ラストゲームになるかもしれない……。
さすがに広島風お好み焼きは美味い。
広島駅は真っ赤に染まっていた。
いきなり菊池涼介が微笑むサントリー烏龍茶の立て看板や新井さんの交通安全ポスターに出迎えられ、構内のお好み焼き屋『いっちゃん』へ行くと、店員のおねえさんは鈴木誠也の背番号51のユニフォームを着て接客していた。他店の店員も多くがカープユニ姿だ。
さすがに広島風お好み焼きはソバがもちもちしていて柔らかく美味い。冷えたコーラとメチャクチャ合う。