球体とリズムBACK NUMBER
森保Jとイングランドに共通点あり。
勇敢な若きタレントと勤勉な監督。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/24 10:30
就任後の3試合で結果、内容ともに得られた森保一監督。その手腕が世界で注目を浴びる時は来るだろうか。
得意のシステムにこだわらず。
この両指揮官にも、通じる点がいくつかある。森保監督が1968年生まれの50歳で、サウスゲイト監督は1970年生まれの48歳でほぼ同世代。現役時代はどちらも10代から所属したクラブ(サンフレッチェ広島とクリスタルパレス)で長年を過ごし、守備的なポジションを務めた。
指導者としては、トレードマークのシステムにこだわらない柔軟な姿勢が、どちらにもある。森保監督は広島時代に3バックを用いて3度のリーグ優勝を成し遂げており、代表でもそのシステムを使うことが予想されたものの、ここまでの3試合はすべて4バック。ウルグアイ戦前の記者会見でその点について質問されると、次のように答えた。
「3バックと4バックは、原理原則として戦う上では変わりないと思っています。もちろんスタートのポジションが違うので、多少の動きの違いはあるが、選手には大きく変わったとか、まったく違うことをやっていると捉えてほしくない。配置を変えることで有利な戦いができるように、両方できるようにしたいと思っています」
両監督とも実直な優等生。
一方のサウスゲイト監督は、ロシアW杯の予選序盤に就任すると、本大会出場を確定させるまでは伝統の4バックを採用したが、その後は3バックのポゼッションスタイルを目指した。W杯ではその試みが奏功し、28年ぶり3度目のベスト4に進出。無関心を装っていた多くの国民を熱狂させた。
ところが、W杯後に開幕したネーションズリーグ初戦のホームでのスペイン戦に1-2で敗れると、次節のクロアチア戦には4バックで臨んでスコアレスドロー。続く冒頭のスペインとの再戦にも4枚を用いて、勝利を掴んでいる。
そして2人とも、実直な優等生のイメージがある。
サウスゲイト監督が代表の指揮を任されることになったとき、一部の人々は「FA(イングランド協会)のイエスマンに一体、何ができる?」と斜に構えた。これといった実績もなく、U-21代表監督やFAのエリート育成に関する責任者を務めていたのだ。曇り空ばかりの彼の地では、そんな批判は避けがたかったのかもしれない。
それでも献身的かつ地道に自分の信じるやり方で仕事を進め、代表キャンプの雰囲気を劇的に良くし、チームのアイデンティティーを再び定義づけようとした。その先にW杯4強の成功があった。