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ドジャース連覇とフライボール。
データ至上主義野球への違和感。 

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byKyodo News

posted2018/10/23 11:15

ドジャース連覇とフライボール。データ至上主義野球への違和感。<Number Web> photograph by Kyodo News

4勝3敗で2年連続のワールドシリーズ進出を決めたドジャース。前田健太の活躍も期待される。

10年間でメジャーは変わった。

 だが、この10年でメジャーの野球は随分と変わってしまった。イチローは昨今の野球についてこんな言葉を選んだ。

「野球を知らない人が操るコンピューターに選手が支配されてしまっている。何かおかしな方向に野球が向かってしまっている」

 その極端な例が『フライボール革命』であり『バレルゾーン』であろう。詳細は他に譲るが、ゴロよりもフライの方がアウトになりにくいというデータを特化。打者は打球に一定量のスピンを掛け、打球を打ち上げる技術習得に躍起である。

 確かに本塁打は野球の華と言えるが、状況に関係なく打者は自分が目指す型でフルスイングするばかりだ。その結果、極端な守備シフトは当たり前のこととなり、逆方向を意識しない打撃はボールを動かす軟投派の投手が得をする時代となった。野球の機微は技術の上に成り立つ知恵比べ。一人称の野球は何とも味気ない。

本塁打数と時代の流れ。

 だが、今年もコンピューターの導きを否定できない結果になっている。今季チーム本塁打数が200を超えたのは11球団あったが、そのうち8球団がポストシーズン進出を果たした。これは時代の流れなのか。

 正しい野球とは何なのか。価値観が曖昧になっていく中で、それでも思う。

 ちゃんとした野球をやろうよ。

 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はリーグ優勝決定シリーズ第5戦後、本塁打なしで勝利した一戦を振り返りこんな言葉を残した。適時打4本がすべて単打であり、かつ中堅から逆方向への一打であったことについてである。

「大事なところでしっかりとみんなが逆方向へ打つ素晴らしい仕事をしてくれた」

 しっかりとしたアプローチがそこにはあった。

 間もなく114回目のワールドシリーズが始まる。公式戦で2位の235本塁打を放ったドジャースと9位の208本塁打を放ったレッドソックスとの戦い。世界最高峰の戦いの名にふさわしい、ちゃんとした野球を見せて欲しい。

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ロサンゼルス・ドジャース
ボストン・レッドソックス
デーブ・ロバーツ

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