メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
ドジャース連覇とフライボール。
データ至上主義野球への違和感。
posted2018/10/23 11:15
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Kyodo News
ちゃんとした野球をやろうよ。
今に始まったことではないのだが、昨今のメジャーリーグの野球はなにかとよろしくない。
ドジャースとブルワーズのナショナルリーグ優勝決定シリーズを取材していても首を捻るシーンが多かった。
こんなことがあった。1勝1敗で迎えた第3戦。1点ビハインドのドジャースは5回無死二塁の同点機を得た。ここで打席には8番のキケ・ヘルナンデスが向かった。
この状況で打者に求められる仕事は言うまでもなく右方向への進塁打だ。最低でも1死三塁の状況を作り出さなければいけないことは、日本のリトルリーグでプレーする子供でさえもわかっている。しかも、短期決戦のポストシーズン。1球、ワンプレーの重みは長丁場のレギュラーシーズンとは違う。
ところが、である。メジャー5年目の内外野の各ポジションを守るスーパー・ユーティリティー・プレーヤーは左翼へのフライを打ち上げた。今季キャリアハイとなる21本塁打を放った自分の打撃に徹したと言うことなのだろうか。
最善のプレーをしない日常。
結果に至るまでには過程がある。進塁打を狙いながらも結果に繋がらない場合もある。相手バッテリーだって、やすやすと同点の走者を三塁には進めたくない。それなりの配球になるのは当然のことだ。だが、ヘルナンデスのアプローチには進塁打の意識はかけらも見られなかった。ただひたすら自分のスイングを貫いた結果、平凡な左飛。ドジャースは完封負けを喫した。
敗因をここに求めているわけではない。大切なことは、すべきことをせずして勝利は掴めないということだ。昭和の時代から日本の緻密な野球を叩き込まれた記者にとって、今のメジャーリーグは日常がこの連続だ。
メジャーにもちゃんとした野球はあった。その代表例が1996年からの14年間でポストシーズンに進出すること13回、5度の世界一を勝ち取ったニューヨーク・ヤンキースだ。進塁打や犠打など状況に応じた打撃はベンチからの指示がなくとも選手各々が実践した。'03年から在籍し、'09年にはワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏が当時、常勝軍団の強さをこう説明した。
「チームのために何が最善か、すべきことは何なのか。みんながそれを考え、実際に出来ることだと思います。タレント揃いではありますが、それだけでは勝てないと思いますよ」