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川又堅碁の「やってやる感」の源。
俺は俺で終わらせない、学ぶ男。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTsutomu Takasu

posted2018/10/15 12:00

川又堅碁の「やってやる感」の源。俺は俺で終わらせない、学ぶ男。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

ストライカー然とした風貌だが、川又堅碁は野生一辺倒の選手ではない。学ぶ意識が彼を一流たらしめている。

俺は俺、で片付けることはしない。

 3年半前の初招集時に彼がこう語っていたことを思い出した。

「選ばれたっていう感覚は全然なかったね。でも代表という場所に行ける以上、自分が一番下手だけど“やってやる”っていう気持ちを誰よりも持って向かったつもり」

 おそらくこの“やってやる”感は、昔も今も変わらない。

 パナマ戦ではワールドカップの舞台でも活躍した大迫勇也のプレーを、ずっと見ていたという。

「サコの動きは、本当に勉強になる。ボールを引き出すにしてもディフェンスの背後で動き出しをやっているから、相手は見えんし、簡単にトラップして簡単にボールを受け取ることができる。ひとつひとつが、なるほどなって思える。いい刺激になるし、自分にも取り入れていけると思うから」

 俺は俺、のスタンスではない。「俺はうまい選手じゃないから」で片づけない。

 足りないものは見て学ぶ。29歳になっても、その姿勢は変らない。

 川又の持ち味と言えば、屈強なフィジカルを活かしたパワフルなプレーだ。ジュビロ磐田では名波浩監督のもと、ポストワークや守備のしつこさも磨いてきた。チームのために精いっぱい汗をかき、働くことがひいてはゴールに結びつく。体を張ることを厭わない大迫のプレーは、良い参考書となっている。

 後半に交代出場する際、森保一監督からはこう指示を受けた。

「前からしっかり守備をしてくれ。チャンスがあったら(ゴールを)狙っていけ」

 守備を意識してからの攻撃。指揮官から求められる役割も理解したうえで、表現しようとした。

「ポイチさんの前でゴールを決めたい」

 森保監督はアルビレックス時代のトップチームのコーチ。2013年にJ1で23得点を挙げてブレイクする前の苦しい時代に、指導を受けてきた。

 川又は言う。

「監督には本当にお世話になった。試合にちょっとしか出られていないときに、サッカーのことをいろいろ教えてくれたし、こっちの思っていることも聞いてくれた。いい人だし、今も全然変わらないというか。もちろん監督が求めていることはしっかりやる。でもそのうえで、ポイチさんの前でしっかりゴールを決めたい」

 オウンゴールを残念がった数分後、ならばきちんとゴールを決めてやるというマインドに変わっていた。自然と、いつでも、どこでも前向きになる。それが川又の魅力でもある。

【次ページ】 ジュビロのためにも“やってやる”。

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