太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
フェンシング協会がビズリーチで
副業兼業限定の人材を募集する理由。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2018/10/04 19:00
ビズリーチ・南社長とフェンシング協会・太田会長は、日本における新しい未来の働き方を提示している。
財政的に苦しい状況があるから。
太田 ビズリーチは、日本サッカー協会の人事部長や、B.LEAGUEの広報・マーケティング部長、ラグビーワールドカップ2019組織委員会の経営人材など、いろいろなスポーツ団体の人材公募も手がけていますよね。
南 そうですね。ただ彼らは、フルタイムでしっかり採用できます。いわば財政的に余裕のある団体であって、スポーツ団体としてはむしろ特殊で例外的だと思っています。サッカーや野球、ラグビーなどのメジャースポーツを除けば、日本のスポーツ団体のほとんどは財政的に苦しい状況にある。
むしろ今回の取り組み──私はこの副業兼業モデルを太田モデル、と呼んでいるのですが──は、将来的には他のスポーツ団体はもちろん、行政やNPO、究極は営利団体にも採用してもらえる可能性があります。
いいものを独占せず共有したい。
太田 僕たちは、他のスポーツ団体さんと競争しているわけではないし、比べるものではないと考えています。もちろん指標として協会登録者数、というものはありますが、僕たちは僕たちの戦い方をしていく、という覚悟を持って、今回の公募に踏み切りました。
でも、いいものは独占せず、みんなで共有したい、という思いはあるんです。スポーツ界における働き方としての「副業兼業モデル」としては、僕たちがいわばファーストペンギンとして飛び込むことになりました。うまくいけば、どんどんシェアできたらいいですよね。
南 実は、公募はゴールではなく、あくまでもスタートです。応募してくださった方々を、どんな基準でどなたを採用するか、そして、採用された方々の「この仕事を通じてどんなことが得られるのだろう、学べるのだろう」という期待にしっかり応えられるようなアウトプットを準備し、プロジェクト全体をマネジメントできるか。そこがうまくいかなければ、太田モデルは失敗例になってしまいます。
残念ながら、私たちはその部分はお手伝いすることができません。厳しい注文ですが、長い時間軸の中で、きちんと採用された方々へのリターンを作っていってほしい。それこそ3、4年後に「あの太田モデルは新しい風を日本に吹かせたよね」と振り返ることができれば、そのとき初めて成功といえるのではないでしょうか。